第1章 タイムリープ
「相変わらず頼りになるなぁ、カノちゃんは。よろしく頼むぜ、“勇者様”。」
「こっちこそよろしく頼むよ、“英雄(ヒーロー)”。」
ナオトは手を差し出す。
「君にしか姉は救えない。そしてカノさん、お兄さんを救えるのは貴女だけです」
ゴクッと生唾を呑み、タケミチはナオトと握手を交わした。その時、カノの頭の中で鈴の音が鳴り、意識が途切れた…。
✤ ✤ ✤
2005年────。
「おーい?聞いてるか?カノ」
「っ…………」
ハッと意識を現実に戻せば、目の前にマドカのドアップがあって、思わず声を上げそうになったが留まった。
「(え、何で兄さん…?)」
辺りを見回すと自分の家にいることが分かった。呼びかけても返事をしないカノを不思議に思ったマドカが心配そうに顔を覗き込んでいる。
「ごめん…何の話だっけ?」
「ったく…お前は女の子なんだからこの間みたいに夜道を一人で出歩くなって言ったんだよ」
「(本当に…過去に戻ってきたんだ。)」
「でも帰りに電話してくれたのは良かったけどな。ていうか忘れ物って何だったんだ?」
「え?あー…借りてたノート!返すの忘れちゃって」
「ふーん…。何もあんな遅い時間に取りに行かなくても。心配すんだろ。」
「今度から気をつける」
“よし!”と一通り話を終えたマドカは冷蔵庫からプリンを二つ持ってきてくれた。
「ほら、お前が食べたがってた濃厚抹茶プリン!可愛い妹の為に兄ちゃん、二軒コンビニをハシゴして買ってきたぞ!」
「ありがとう兄さん」
「一緒に食べような」
「うん!」
隣に座ったマドカと並んで抹茶プリンを食べる。濃厚な抹茶と上にかかったトロッとした生クリームが混ざり、口に運ぶ。
「どうだ。美味いだろ?」
「美味しいけど何で兄さんが嬉しそうなの?」
「お前の喜ぶ顔が見れたから!」
マドカはニッと笑う。
「そうやってずっと笑っててくれな?」
「兄さん…」
「お前のことは俺が守ってやる」
「(兄さんは…理不尽なルールを押し付ける厳しい父親の“縛り”から解放する為に、私を宮村の家から連れ出した。)」
.