第7章 秘密、バレちゃいました。
「待ってください!ば、場地…さん!」
「!」
声を掛けると振り向いてくれた場地だが、知らない奴に引き止められた事に不愉快そうに顔をしかめる。
「誰だオマエ?」
「宮村カノトと言います。あの…さっきはタケミチくんを助けてくれてありがとうございました」
「はぁ?」
ぺこっと頭を下げるとしかめた顔が更に険しく歪み、何言ってんだコイツ、的な目で見られる。
「オレがいつアイツを助けたんだよ」
「タケミチくんが稀咲を殴ったせいでせっかくの任命式が台無しになりました。幹部の皆さんもお怒りです。もし場地さんが殴ってなければ…タケミチくんはもっと酷い目に遭ってたと思います」
「……………」
「だから…ありがとうございます」
「意味わかんねーよ。オレはアイツを助けたワケじゃねぇ。勘違いすんな」
「場地さんにとってはそうなのかも知れません。でも僕には貴方が彼を助けたように思えました」
「随分都合のいい頭してンな。それともオマエの目は腐ってんのか?」
「……………」
場地の冷笑がカノトに突き刺さる。
「つーかオマエ…全然不良っぽく見えねーな。どっちかってーと優等生タイプだ。そんな奴が何でこっちの世界に首突っ込んでんだ」
「…僕には“やるべき事”があります。その為なら不良の世界だろうがヤクザの世界だろうが首を突っ込みます。」
「へぇ、大きく出たな。オマエみたいなのが戦いで真っ先に死ぬタイプだって知ってるか?」
「…はい」
「認めんのかよ」
呆れたように溜息を吐いた場地にカノトは真っ直ぐな視線を向ける。
「でも僕は諦めない」
「!」
「どんなに相手が強くても、恐ろしくても、大事なものを守る為には立ち向かう勇気が必要なんです。時には逃げ出したいと思うかもしれません。でも…その“迷い”が運命を決めることだってあります。だから僕は大事なものを守る為に立ち向かいます」
掌をギュッと強く握りしめる。すると場地は憐れむような目をカノトに向ける。
「オマエ、殴られた事ねーだろ」
「…生まれてこの方一度も」
「だからそんな甘いコト言えんだよ」
その言葉にピクッと反応した。
.