第6章 幸せは一瞬で終わりを告げ
「……けどよ」
「……けど?」
「本当にもう一度人生をやり直せるなら一つやんなきゃいけねぇ事がある」
「え?」
「稀咲を殺す!」
ゾワッ
ドラケンの稀咲に対する激しい憎しみと怒りに三人は驚いた表情を揃える。
「(稀咲!?)」
「(稀咲鉄太!?)」
「稀咲ってあの…!?」
タケミチが言いかけた途中でブザー音が鳴った。
「時間です」
外で待機していた係員が呼びに来て、ドラケンは立ち上がる。
「タケミチ、カノト。東京から離れろ」
「「え?」」
「殺されかけたんだろ?」
ドラケンはタケミチを見る。
「だからここを訪ねてきた。稀咲にとって人を殺すのは虫を殺すぐらいの事だ」
「ちょっと待って下さい!!」
行こうとするドラケンを呼び止める。
「なんで!?なんでオレが命を狙われるんですか!?」
「……稀咲はマイキーに心酔してた。でもそれがいつの間にか憎悪に変わってた。稀咲はマイキーの大事なモン全てを奪いたいんだよ」
そしてタケミチから視線を外し、隣にいるカノトに移す。
「カノ、オマエは特に注意しろ」
「僕…ですか?」
「稀咲だけじゃなくマイキーにもだ」
「え?どうしてマイキーくんまで?」
「…アイツはもう、オマエを手放せないところまできちまってる。オマエの存在がアイツの中で大きくなり過ぎてんだ」
「!」
「マイキーはオマエが自分の傍からいなくなることをきっと許さねェ」
「(あ……。)」
『もしオレの傍から離れたら…オマエを殺す』
「(あの時は冗談だって笑ってたけど…“今”のマイキーくんなら本気で私を…)」
「だからアイツは…今でもオマエの事を…」
「え?」
ボソッと小さく呟かれた言葉はカノには届かなかった。
バタンッと扉が閉められ、ドラケンが去った後、三人はナオトの家に向かった。
✤ ✤ ✤
「ドラケン君が死刑囚だったなんて」
「彼はどうして殺人なんか…」
「……………」
「ナオト…稀咲って奴は一体…何者なんだ?」
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