第1章 タイムリープ
「あと12年待って、その一日の好機(チャンス)にかける…それはリスクが高すぎます」
どこか焦るようにナオトは爪を噛む。
「その日を逃せば、もう姉は救えない。それじゃあダメだ!!今できる事をする!」
ナオトの部屋には日向の写真立てが飾られてあった。
「今タイムリープして12年前に戻り、中学時代ある人と会ってください」
「?ある人?」
「“東卍”の2トップ。“佐野万次郎”と“稀咲鉄太”です」
「こわっ」
「!」
ホワイトボードには佐野万次郎と稀咲鉄太の写真が貼られていた。カノはその写真をじっと見つめている。
「この二人が出会わなければ、今の“東京卍會”は存在しなかった」
「………、!」
「つまり姉が巻き込まれて死ぬ事もなくなる訳です。そしてカノさんのお兄さんも」
「…なるほど。中学時代に戻り、その二人が出会う事を止めれば」
「“東卍”は存在しない!」
「じゃあ…ヒナちゃんも兄さんも、死なずに済むかもしれない?」
「はい!」
「…わかったけど、どーやって過去に?」
「タイムリープの“引き金(トリガー)”はわかってますよ」
「………、え!?」
「ボクにはわかるんです」
「それは?」
「12年前タケミチ君と“握手”した時、過去の二人の中から“君たち”が消えるのを感じた」
「それじゃあ…トリガーって…」
「トリガーはボクとの“握手”です。恐らく君に助けられたボクは、君の能力の“一部”なのかもしれません」
「(そうか…ぶっ飛んだヤツだと思ったけど、ナオトはオレたちがタイムリープできると信じているからここまで本気なんだ…)」
「準備はいいですか」
二人は顔を見合わせて頷く。
「ああ」
「うん」
もし運命を…
未来を変えることができたなら
兄さんを救えるかもしれない
「“佐野”と“稀咲”。二人は2005年の8月に出会っています。どちらか一方と接触し、行動を共にして、出会いを止めてください」
「おう…なんとかしてみるよ」
「大丈夫。私が一緒だもの」
.