第6章 幸せは一瞬で終わりを告げ
「私は昔も今も貴方が嫌い。兄さんの人生を台無しにした貴方が嫌い。私から自由を奪った貴方が嫌い。大嫌い。」
そう吐き捨て、その場から去ろうとする。
「どこに行くつもりだ」
「家に帰る」
「あのマンションはもう出なさい」
「何…言ってるの?」
「望が死んだ今、跡取りがいなくなった。これからはお前が宮村家の将来を守っていく立場になる」
「ふ…ふざけないで!!」
「ふざけてなどいない」
「…絶対にいや」
「何……?」
「私はもう宮村家とは縁を切ったの。今更家に戻れとか…意味わかんない。そんなに跡取りが欲しいなら養子でも取ればいいでしょ」
「何を言っているんだお前は…。もう子供じゃないんだから聞き分ける事を覚えなさい」
呆れ返るように父親は溜息を吐いた。その態度にイラッとしたカノは顔をしかめる。
「知らない!!私は宮村の家には戻らない!!」
「お前は宮村家の人間だろう!?」
「好きで宮村家に生まれたんじゃない!!」
「何故お前は反発ばかりするんだ!!はぁ…頼むからあまり私を困らせないでくれ…」
苛立つように呆れ返っている父親に悔しくて掌を握り締める。
「貴方が理不尽で自分勝手だから腹が立つの!!宮村家に戻ればまた私を縛り付けておく気でしょう!?そんなのは死んでもお断り!!あのマンションは絶対に出ない!!兄さんとの思い出まで消そうとしないで…!!」
「心叶!!待ちなさい!!」
これ以上、会話をしていたくなくて、逃げるように葬儀式場を走り去った。
怒りと悲しみと悔しさで頭の中がぐちゃぐちゃになり、涙で視界がぼやけ、すんっと鼻を鳴らす。
「(絶対助ける。何度失敗しても、兄さんが助かる未来にたどり着くまで…何度だって、兄さんのいる世界を取り戻す…!!)」
だから
決めたよ 兄さん
「私───強くなる。」
先程まで魂が抜けたような表情を見せていたカノだが、生気を取り戻したその目にはしっかり、力強い色が宿っている。
そしてその足である場所へと向かった。
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