第6章 幸せは一瞬で終わりを告げ
「あの…どちら様、ですか?」
「“どちら様”?…ハハ、そんな寂しい事言うなよ。やっと再会できたのに」
「え?」
「これはもう運命だよな?オレ達は巡り会う運命だった。だからこうして必然的に出逢えた。偶然なワケねェもんな」
「何を…言って…」
ドクン
「(あれ?さっきこの人、何か引っかかる言葉を口にしたような…)」
“勇者チャン”
恐る恐る、目の前の男を見ると首に当てられた手の甲には“罰”が書かれていた。
ドクン
『一応、今“仮”で愛美愛主仕切ってる半間だ』
「(半間!!?)」
この瞬間、ぞわりと身の毛がよだった。
「っ…………!!」
慌ててベンチから立ち上がり、恐怖と驚きが交じった顔で半間を見る。
「お?やっと思い出してくれた?“勇者チャン”。」
狂喜を孕んだ目でニヤリと笑う。
「な、何で…どうして…」
「やっぱそっちの方がいいな」
「え……?」
「男の格好してた勇者チャンも良かったけど、女の方が更に美人が際立つ」
「い、意味がわからない…」
何で半間がここにいるの!?
というか何で私に会いに来るの!?
「(兄さん早く戻ってきて!!)」
大声を出して助けを呼びたいが、半間の事だ、叫びに気付いて戻ってきたマドカに何をするか分からない。
「(無闇に叫べない…)」
絶体絶命の大ピンチ。
「なァ勇者チャン。まだアイツに惚れてンの?」
「は?」
「アイツをずっと待ち続けたって勇者チャンが幸せになるとは限んねェじゃん。だから早くオレのものになっちゃえよ」
「いや……」
困惑する顔で半間を凝視すれば、カノの首に下げられているネックレスに手を伸ばし、掴んだ。
「っ!触らないで!!」
バッと身を引き、半間から逃げようとするがグイッと顎を強引に掴まれ、顔を近付けられる。
「そんなに“ソレ”が大切か?」
「い、たい……っ」
「そんなモン捨てちまえ。代わりにオレが勇者チャンに似合うヤツ買ってやるからさぁ」
「いや…離して!」
「嫌がるとか傷付くじゃんよぉ。勇者チャンは優しいからオレを見捨てねぇだろ?」
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