第6章 幸せは一瞬で終わりを告げ
マドカがカノの為に予約した店は落ち着いた雰囲気のフレンチレストランだった。
高そうな店だとすぐに分かったカノは不安げにマドカを見る。
「絶対高いよこのレストラン。お金大丈夫…?」
「え?妹の為ならどんな高級なレストランも安く感じるんだけど?」
「……………」
真顔で言われた為、それ以上は追求しないことにした。それから美味しい料理が運ばれて来てカノはマドカと楽しい時間を過ごした。
「お腹いっぱい…」
「それはよかった」
「今日はありがとう兄さん。レストランも素敵だったけど、兄さんと一緒に過ごせて楽しかったよ」
「俺もお前と一緒に料理を食べて、こうして夜の公園を散歩できて嬉しいよ」
帰り道、少し寄り道しながらカノの勤める病院に忘れ物を取りに向かう。
「見て!星がたくさん出てる!」
カノは夜空を見上げた。
「キラキラ輝いて綺麗…」
「!」
カノの首に掛けられたネックレスを見つけたマドカは表情を曇らせる。
「そのネックレス…」
「兄さん?」
突然立ち止まったマドカを見てカノも足を止め、マドカの方を振り向く。
「ピンクゴールド…」
「え?」
「まだ大事に持ってるのか…?」
「あ、このネックレス?前に言ったでしょ?友達から貰ったって」
「友達じゃなくて“アイツ”からなんだろ?」
夜風が靡き、カノの髪を揺らす。
「アイツって…?」
「……………」
「兄さん?」
「ごめん…今のは忘れてくれ」
「え、でも…」
「やっぱ夜になると少し冷えて来たなー。カノ、喉渇かない?何か買ってきてやろうか?」
「…じゃあ、ココア。」
「分かった。そこのベンチに座って待ってろ。すぐ買ってくるから!」
「私も一緒に行った方が…」
「お前は仕事で疲れてるんだから休んどけ!兄ちゃんがちょっくら自販機までひとっ走りして来っから!」
「気をつけてね!」
「絶対そこから動くなよ!何かあったら大声で俺を呼べ!」
そう言ってマドカは猛ダッシュで自販機まで走って行った。
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