第6章 幸せは一瞬で終わりを告げ
「兄さん」
「ん?」
「ただいま!」
「おかえり、カノ」
満面の笑みを浮かべるカノにマドカもにこりと笑い返した。
家に入ると過去のままで思わず懐かしむ。
「ねぇ兄さんって仕事何してるんだっけ?」
「え!忘れたのか!?」
予約の時間までまだ余裕がある為、リビングで寛いでいた。ふと気になってマドカの現在の職業を聞くと何故かショックを受けている。
「そりゃ最近会えてなかったけどさー…俺の職業まで忘れられてるとか地味にヘコむ…」
「ごめんごめん」
不貞腐れると面倒なので適当に謝った。
「これでもカノと同じ医者なのに…」
「え!?兄さん、医者になったの!?」
「…マジでどうしたカノ。勤め先は違うけどお前と同じ医療の道に進んだんだよ」
「(兄さんが…私と同じ…)」
「俺は医者でお前は看護師。だろ?」
「そっか…ふふ、おんなじだったね」
「変な奴に絡まれてないだろうな?」
「平気だよ」
「食事に誘う奴とかいるんじゃないのか?」
「断ってるから安心して」
「お前は可愛いから心配だよ」
「私もう26だよ?」
「何歳になっても俺の妹は世界一可愛いんです!」
何故か怒られた。
「やっぱり俺もお前と同じ病院で…」
「出来るわけないでしょ」
「じゃあカノがうちの病院に…」
「もー兄さん、しつこい」
「妹にしつこいって言われた!」
ガーン!!とショックを受け落ち込むマドカ。
そして予約の時間の少し前になり、カノは支度を始めた。
「今日も俺の妹が可愛い…!」
「恥ずかしいなぁ」
「そのスカートも似合ってる」
「ありがとう。これね、友達とショッピングに出かけた時に見つけて一目惚れしたの。淡い紫と白のグラデーションが可愛くてお気に入りなんだ」
「はぁ〜天使!」
「だから恥ずかしいってば!」
「じゃあ行くか」
「うん」
ちゃんと戸締りをして、家を出た。
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