第6章 幸せは一瞬で終わりを告げ
「(それにしても不思議。タイムリープも全部夢だったのかな?)」
「カノちゃん」
採血を終え、病室を出ると同僚に呼び止められた。
「もうすぐで上がりでしょ?飲みに行かない?」
「あーもうそんな時間…。うん、いいよ。コレ置いてきちゃうね」
すると同僚の目が自然とカノの首元に向けられる。
「カノちゃん、ネックレスしてるの?」
「え?してないよ?」
「でもそこから見えてるのってネックレスのチェーンだよね?」
「!」
首に掛けられたチェーンを引っ張り出す。
ドクン
「(違う…夢じゃない。)」
「パズル型のネックレスなんて珍しいね」
「(マイキーくんから貰ったネックレス!!)」
「?カノちゃん?どうかした?」
「っ、ごめん!!飲みに行けないや!!あとコレ!悪いけど代わりに届けてくれると助かる!!」
「え!?ちょっとカノちゃん!?」
「行かなきゃ…!!」
「行くってどこに!?勝手に病院抜け出すと看護長が……って、もういない…」
トレーごと押し付けられた同僚はぽかんとしたまま、走り去るカノを見送った。
✤ ✤ ✤
「ナオトくんの番号が登録されてない…!タケミくんも出ないし何がどうなってるの!?」
訳が分からず、携帯をいじっていると、操作をミスったのか、メモのアプリが起動し、そこに今日の日付と予定が書き込まれていた。
「【私の好きなお店を予約してくれたらしい。だから今日は終わり次第、急いで家に帰る。】」
身に覚えのない予定に首を傾げる。
「(待って。)」
消去しようとして手が止まる。
「予約してくれたって…誰が?」
ドクン ドクン
「とにかく…家に帰らなきゃ」
携帯を握りしめたまま、急いでマンションに向かい、エレベーターに乗り、部屋の前で立ち止まる。
「鍵…どこ閉まったっけ」
そこでハッとして自分の格好を見る。看護服のまま飛び出してきたせいで携帯以外の持ち物は更衣室のロッカーに置いてきてしまったのだ。
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