第6章 幸せは一瞬で終わりを告げ
「ダメなわけ…ないです。というよりマイキーくんはいいんですか?男の僕と出掛けるなんて…」
「オレがオマエと出掛けたいんだよ。そこに男とか女とか関係ねーよ。むしろオレとケンチンなんて男二人でファミレスで飯食うぐらいだしな」
「(それは知ってます。)」
いつかの尾行を思い出す。
「だからオマエの事、オレに教えて」
「はい…行きたいところが…たくさんあります。マイキーくんもきっと楽しめるはずです」
「なら期待してようかな。今度はオマエがオレを最高に楽しませる番だな!」
「任せてください!」
もう会えないと分かっていても
できない約束をしてしまう
「マイキーくん、ありがとうございました」
スッと手を差し出す。
「こっちこそ、ありがとな…カノ」
二人は握手を交わす。
「ひとつだけ我儘言っていい?」
「マイキーくんの我儘は今に始まったことじゃないのでどうぞ」
「カノひでぇ」
可笑しそうに笑ってマイキーは優しい眼差しでカノトを見つめる。
「抱きしめさせて」
「!……いいですよ」
「いいの?」
「だってマイキーくん、ダメって言っても抱きしめるじゃないですか」
「うん」
「聞いた意味とは??」
「カノ、ぎゅーしよ」
マイキーが両手を広げる。
「(これが最後…。)」
カノトはマイキーに体を寄せるとギュッと抱きしめた。マイキーも抱きしめ返す。
「(あったけぇ…)」
「(あたたかい。)」
「カノ体温高めなのな」
「マイキーくんもです」
「カノを抱き締めて寝たら絶対いい夢見れるな」
「………寝ませんよ?」
「けち。」
「僕は抱き枕じゃないので」
「ならオレ専用の抱き枕になって」
「もう!だからすぐそういう事言わないでください…!」
「やっぱり赤くなった」
「…離れてください」
「ヤダ。もっとぎゅってさせて」
ぎゅ〜っとマイキーが抱きしめる腕に少し力を込めた。
「(彼といるととても幸せな気持ちになる。この気持ちは一体何だろう…?)」
目を閉じ、その居心地さに浸った。
.