第61章 巡り会って、また恋をして。
「(呼ばないと本当に拗ねそう…)」
早く早くと急かすように見つめられて、仕方ないと諦めたカノは肩を竦めた。
「万次郎くん」
「!」
「(嬉しそうな顔になった。)」
「なぁに、カノ」
「っ…………」
そんな優しい声で呼ばないでほしい
「本が読みたいならさ、オレの部屋に来いよ。漫画しかねぇけど結構面白いヤツあるから貸してやる」
「え?万次郎くんの部屋?」
「もちろん…断ったりしねーよな?❤︎」
ニッコリと圧のある笑みと何故か脅しのように聞こえる言葉に体がぷるぷると震え、半ば強引にマイキーの家に連行されるカノ。
◇◆◇
「お、お邪魔します…」
「ランドセルその辺に置いていいよ」
部屋に招かれたカノは背負っていたランドセルを床に置いて周りを見渡す。
「(懐かしい…あの頃に戻った気分。)」
「カノ、こっち来て」
「う、うん」
少し緊張しながらソファーに歩み寄り、マイキーの隣に座る。
「キンチョーしてんの?」
「してないよ…」
「そんなビクビクしなくても別に取って食ったりしねーし、もう少しリラックスすれば?」
「……………」
今は子供の姿をしているが、中身は18歳のれっきとした男であり、ましてや大好きな相手を前にして緊張するなと云う方が無理があった。
「なぁ、何でこっち見ねえの?」
「お気になさらず…」
全然こっちを見てくれないカノにイラッとしたマイキーはムッと顔をしかめ、手を伸ばして亜麻色の髪に触れる。
「!」
「こっち見ろよ。オレ以外見んのダメ」
「ダ…ダメって…」
「あ、やっと目合った。やっぱ綺麗だよなー、カノの紫色の目。宝石みたいにキラキラしててずっと見つめてたくなる」
バチッと目が合うとマイキーの顔がふにゃりと柔らかげに緩んだ。その顔さえも愛しく感じ、胸がキュンッと鼓動を打つ。
「あ、あの…それよりも本…」
「本?」
「面白い漫画あるから貸してくれるって…」
「あー…そうだったっけ?」
「(そうだよ!!何で忘れるの!?)」
ガーン!!っとショックを受け、唖然とする。
.