第61章 巡り会って、また恋をして。
「何で逃げようとすんだよ…。オレ…オマエのことずっと…」
「誰と間違えてるのか知らないけど人違いだよ!私、君のこと知らない!」
「…ふざけんな。オレがオマエを見間違えるはずねぇだろ。どれだけ一緒にいたと思ってんだ。オレのこと忘れるとか絶ッ対ェ許さねぇから」
「ね…ねぇ痛いよ。離して。」
マイキーが無意識に掴んだ腕に力を入れると、カノは痛みで顔をしかめた。
「オマエに存在ごと忘れられるとか…絶対にイヤだ。オレは全部覚えてんのに。今も再会できた嬉しさで舞い上がりそうになってんのに…知らねぇって拒絶されたら…もうオマエの特別に戻れねぇじゃん…っ」
眉を八の字に下げたマイキーの辛そうな顔に胸がキュッと締め付けられる。それでもカノは本音を隠して知らないフリを続ける。
「さっきから何の話してるの?私達は今日初めて会ったんだよ?意味が分からないよ…」
「そっ…か。悪い…腕、ずっと掴んで痛かったよな。ごめんな…」
ショックを受けたマイキーは掴んでいた腕を放す。気まずい空気に堪えられず、カノは視線を彷徨わせる。
「えっと…帰るね」
「あのさ、また会おうよ。カノとこのままお別れとか絶対にイヤだ。もっとオマエと一緒にいたい」
「……………」
「ダメ?さっき乱暴に腕掴んだからオレのこと嫌いになった?嫌いになんないで…カノ。オレとまた会いたいって言ってよ…」
普段は自信に満ち溢れており、喧嘩の強さは天下一品を誇る、無敵と恐れられた男が、カノの前では子供のような素顔を浮かべ、弱さを曝け出している。
「…嫌いじゃないよ。その…また会おう。」
「!」
パッと嬉しそうな顔で笑うマイキー。
「絶対だからな!約束破んなよ!」
「うん」
「よし!じゃあ…またな!カノ!」
「またね」
手を振るマイキーに手を振り返し、佐野家を後にする。カノの姿が見えなくなると、マイキーの口許に笑みが浮かぶ。
「──…やっと会えた。」
嬉しくて泣きそうになるのを隠す為に片手で目元を覆う。愛する恋人とこの世界でまた出逢うことができた。それはマイキーにとって、何よりも望んでいた願いだった。
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