第61章 巡り会って、また恋をして。
「にゃー」
「!」
学校帰りに公園の前を歩いていると、猫の鳴き声が聞こえ、顔を上げる。
「…キャシー?」
姿を現したのは真っ白な毛並みの子猫で、カノが飼っていた白猫に似ていた。
「キャシーなの?」
「にゃー」
「あ!待って!」
走り去る白猫を慌てて追いかける。少し距離を空けながら時折後ろを振り向いてカノが着いて来ているかどうかを確認している。
「(もしかして案内してくれようとしてる?)」
見失わないように追いかけていると、白猫はどこかの家の中に入り込んでしまう。
「え…?ここって…」
乱れた呼吸を整えながら、白猫が入って行った家の前で立ち止まるカノ。表札に書かれた苗字を見た瞬間、目を見開いて驚いた。
「(追いかけるのに必死で気付かなかった。何度も通ってたのに…。)」
その表札には【佐野】の文字。会わないと決めた手前、昨日の今日で家に来てしまった事に気まずそうに顔をしかめる。
「(万次郎くんの家…。あの子は知ってて私をここへ?…いや、まさかね…。)」
「うちに何か用か?」
「!」
どうしようか悩んでいると声を掛けられ、ハッとして顔を上げる。
「(真一郎さん!!)」
「どうした?迷ったのか?」
「あ、あの…白猫がこのおうちに迷い込んじゃって…」
「猫?」
「それで…あの…おうちの中に入って白猫さん探してもいいですか?」
流石に白猫を置いて一人だけ帰るのは気が引けた。真一郎は少し考えた後、カノの頭の上にポンッと優しく手を乗せて笑う。
「優しいなお前」
「(兄さんとはまた違う優しい手…)」
「いいに決まってるだろ。つってもオレはこれから用があるし…。お、そうだ。弟がいるから一緒に探すように頼んでやるよ」
「え!?」
「おーい!マンジロー!」
「(万次郎くんを呼ぶの!!?)」
あわあわと慌て出すカノに気付かず、真一郎は家の中にいる弟の名前を大声で呼んだ。すると玄関の扉が開き、現れたのは…。
「何?シンイチロー」
ピンク色のパーカーを着たマイキーだった。その姿を目に映した途端、カノの瞳が喜びで揺れた。
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