第61章 巡り会って、また恋をして。
「じゃあ…その人に…弟さんはいる?」
「会った事はねェけど確か弟がいるって言ってたな。真一郎に似てバイク好きなんだってさ」
それを聞いて安心感と嬉しさが込み上げ、涙が零れ落ちそうになるが唇をキュッと結び、必死に堪える。
「そう…なんだ」
彼が生きてる
やっぱりタイムリープしたんだ
「(夢なんかじゃない。過去を変えたんだ。あの人がこの世界で生きてる。私と同じ世界で。)」
「どうしたカノ?涙目になってるけど味噌汁そんなに熱かったか?」
「ううん、違うの。今日も兄さんのご飯は美味しいって感動してたの」
「はぁーマジで俺の妹天使過ぎて尊い。朝から可愛すぎてキュンですポーズしちゃう!」
口許を手で覆いながら、片手の親指と人差し指を交差させて"キュンです"ポーズを作り、カノの可愛さに一人で悶えているマドカ。
「(それが聞けて良かった。万次郎くんが生きてるって分かった瞬間、今すぐ彼に会いに行きたくなった。でも…私達が再会して、またあんな運命を辿ることになったらって思うと、怖くて会いに行く勇気がない…。)」
「食べ終わったら皿シンクに下げといて。カノはもう少しで学校行く時間だろ?」
「うん」
食べ終わった皿をシンクに下げ、学校に行く支度をする為、一度自分の部屋に戻る。
「あれ?私が小1ってことは…8個離れてる兄さんの年齢って…14歳!?中学生!?それなのに今から二人暮し!?」
以前までは大学生のマドカと二人暮しをしていたが、過去が変わった現在、中学生のマドカと何故か暮らしている。
「小学生と中学生を二人暮らしさせることにあの人達は反対しなかったの…?あーでも…おじい様は面白がって賛成するか。相変わらず私達で遊ぶ事が生き甲斐なんだな」
ウンザリ顔を浮かべて深い溜息を吐く。窓から見える外の景色は色づいていて、不思議と心も晴れやかな気持ちになる。
「(この世界が彼にとって、平穏で、幸せなものでありますように。二度と失いたくはないから…大事な貴方を守るためにも、私達は再会しちゃいけないんだ。)」
赤色のランドセルを背負って、マドカに行ってきますの挨拶を告げて、学校へと向かった。
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