第60章 愛から生まれた呪い
「しっかりしろよカノ!」
「耳…貸して、ください」
「耳…?」
混乱した顔でカノトの口許に耳を近付ける。
「…今度、こそ…幸せに…生きて。貴方が幸せだと…僕も嬉しい…から」
「っ…………!!」
マイキーはカノトを見る。
「…いやだ。オマエがいない世界でオレだけ幸せに生きるなんて…そんなの、無理だ…っ。オレは…オマエがいねぇと生きていけねぇのに…!」
涙を流しながら片目を覆うように手で押さえる。
「ごめん…ごめんなカノ。今までオマエに酷いことして傷付けたこと謝るから…謝るだけじゃ許さねぇって言うなら、オレのこと気が済むまで殴ってもいい、酷い言葉を浴びせてもいいから…オレを置いていくなよ…ッ!!」
「……………」
「頼むよ…カノ…」
震える声で血で汚れたカノトの手をガシッと握る。
「(目が霞む…体中痛くて…呼吸するのも苦しい…私、死ぬんだろうな。)」
「オレを独りにしないでくれ。オマエに置いて逝かれたら…オレはどうすればいいんだよ…」
「…大丈夫、です。僕がいなくても…貴方の周りには…貴方を慕って着いてきて…くれる…たくさんの人たちが…います。貴方は…もう独りなんかじゃ…ありません…」
「そこにオマエがいないんじゃ意味ねぇだろ!なぁカノ!オマエがオレを独りにしないって言ったんだろ!オマエがオレを幸せにしてくれるって言ったんだろ!だったら…っ、だったらさ…ちゃんとオレの傍にいなきゃ…ダメじゃん…っ」
人前では決して弱さを見せない人だが、大事な存在を失うかも知れないという恐怖心から涙が止まらず、縋るように両手で冷たくなったカノトの手を握るマイキー。
「(今のがこの人の心の底からの本音…。あの時とは違う偽りのない言葉。あぁやっぱり…子供のように泣き縋るこの人のことが、どうしようもなく、好きなんだなぁ…。)」
「カノ…」
微かに口許を緩めて笑い、最期の言葉をマイキーに伝えようとするカノト。
「ま…万次郎、くん…」
「!」
「あの時…酷いこと言って…ご、めんなさ…い。貴方のことを忘れて…別の人と…幸せになる…なんて…言ったけど…本当は…」
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