第60章 愛から生まれた呪い
じわりと涙を浮かばせ、声を震わせながら言う。
「貴方じゃない…と…ダメ…なんです」
「…………っ」
「万次郎くん…しか…好きになれない…んです。貴方以外…もう愛せないんです」
「カノ…」
「ずっと…大好き、です…よ。誰よりも…貴方のことを…愛して…ま…す…」
紫色の綺麗な瞳から光が消えた───。
「…カノ?オイ!!カノ!!」
「カノト!!」
目の前の光景に思わず涙を流す二代目東京卍會の面々の前で、反応を示さなくなったカノトの名前を呼び続けるマイキー。
マイキーが何度名前も叫ぼうとも、既に死んでしまったカノは目を開けたまま動かない。
「起きろカノ!!!頼むから起きてくれよ!!!」
体を刀で貫かれ、血を流して地面に横たわるカノトを前にしてマイキーは涙を溢れさせる。
「こうなんねぇために…手放したんだぜ?オマエが死んだら…この先どうやって生きていけばいいんだよ…」
タケミチ達も涙を溢れさせる。
「カノ…オレを見てよ。その声でもう一度オレの名前呼んでくれよ。自分だけ全部伝えて、先に逝ってんじゃねぇよ…」
体を震わせて顔を伏せるマイキー。
「オレ…まだオマエにちゃんと伝えられてねぇんだぞ。オレも…本当はオマエが好きだって。オマエだけを愛してるって」
頬に触れると冷たさが指先に伝わり、マイキーはくしゃりと泣きそうに顔を歪める。
「自分に暗示を掛けてオマエの存在ごと忘れようとしたけど…結局無理だったな。オレの方が…いつまでもオマエの面影を追ってる。今も…オマエが目ぇ覚ましてくれるって心のどこかで信じてるんだ」
「マイキー君…」
「なぁカノ、オマエが隣にいてくれるだけでオレはいつも幸せだったんだ。オマエといる時だけは"黒い衝動"の事も忘れられた。オマエのくれた愛が…オレを救ってくれたんだ」
力の入らなくなったカノトの手をギュッと握り締める。
「だから…頼むよ、カノ。目ぇ覚ましてくれよ!!!」
チリンー・・・
叫んだマイキーの目から、握っていたカノトの手へと涙が落ちた瞬間、鈴の音が聞こえた。
next…