第60章 愛から生まれた呪い
「ねぇ…今貴方を抱きしめてるのは、誰なのか…分かりますか…?」
カノトの身体からボタボタと大量の血が地面に落ちる中、抱きしめる温もりに懐かしい温かさを感じたマイキーは、"黒い衝動"に呑まれていた状態から正気を取り戻す。
「カノ…?」
久しぶりに名前を呼ばれたカノトは血が付いた口許を緩めて抱き締めていた体を放すと、驚いた顔を浮かべているマイキーに向けて微笑んで見せた。
「良かっ…た…」
その直後、支えを無くしたカノトの体が傾き、ドサッと血溜まりの上に倒れ込んだ。
「カノト!!」
タケミチが座り込み、涙を浮かべる。
「何で急に飛び出してきたんだよ!?」
「君が…刺されて死ぬ、未来視(ビジョン)を…見た)」
「!!」
「止めなきゃ…と、思った。気付いたら…勝手に体が…動いてた。君は…死んだらダメだ…」
「オマエだって死んだら駄目だろ!!マドカさんを残して死ぬなよ!!あの人はオマエの帰りを待ってるんだぞ!!」
タケミチは怒りながら涙を流す。
「友達…だから」
「!!」
「君を…助けたかった」
「オマエ…」
カノトは友達の為なら体を張れる奴だったと思い出す。
「君とは…長い付き合いだもの。それに…ヒナちゃんを残して逝くなんて…絶対にダメ…」
「だからってオマエがオレの代わりに死ぬのは違うだろ!!」
「ごめん、ね…」
謝罪の言葉を告げ、マイキーに視線を移す。マイキーの顔からは血の気が引き、放心した状態でカノトをじっと見下ろしていた。
「手を…握って。貴方がトリガーだから…。何度でも…やり直して…今度こそ…助けるから」
「やり直す?オマエ…何言ってんだよ?」
「ごめん、ね…上手に、救ってあげられ…なくて…。今度こそ…約束、守る…から…」
全身の力が抜けたようにドサッと地面に座り込むマイキー。
「貴方のせいじゃ…ないです、から…責任感じないで…くださいね。僕が自分から…刺されに…いったんです。貴方は何も…悪くない」
「カノ…」
「名前…やっと呼んで、くれた…」
眉間を寄せて苦しげに言えば、ゴホッと口から血を吐き出す。
.