第60章 愛から生まれた呪い
「なのに気付いたら家にいて、新しい過去の記憶ができてた…」
介護士だったはずの真一郎はバイク屋になっており、マイキーが東京卍會という自分のチームを作って暴走族のリーダーをやっている現状を目の当たりし、ワケが分からないと頭を抱える春千夜。
「春千夜…オレは…万次郎を救う為にタイムリープしたんだ」
「え?タイムリープ?何言ってんだ真兄。」
困惑する春千夜に対し、真一郎はその為に自分は人を殺したとタイムリープの経緯を話し始める。
「今日聞いた話、秘密にしてくれ」
「うん…誰にも言わないよ…」
"言ったって誰も信じてくれないし"と苦笑した春千夜と別れて道を歩いている最中、自分の手を見つめ、タイムリープの力はもう自分には必要ないと呟く真一郎。
「うらあぁぁあ!」
「ん?」
「正義の味方、参ー上!!!」
公園の前を歩いていた真一郎はその声に気付き、顔を上げる。
「中学生のクセに女の子一人に寄ってたかっていじめるなんて許せねぇ!!」
マントを羽織り、いじめられている女の子を助けるために自分より遥かに大きい相手に挑もうとしている男の子がいた。
その男の子は震えながらも殴りかかろうとするが、中学生三人を相手にボコボコにされてしまう。
「オイ!もうやめとけば?」
少しの間様子を見ていた後、中学生達に対して声を掛ける真一郎。注意された事が気に食わなかったのか、中学生三人は真一郎に歯向かう。
「あ?」
キレた真一郎が電柱を殴り、拳の跡が残ったのを見た中学生三人は驚いて謝罪しながらその場を走り去って行った。
「大丈夫か?少年。」
「どうやったら強くなれる?オレはアンタみたいになりたい。本物のヒーローになりたい!!」
涙を流しながら口にしたのを聞いた真一郎は、ホームレスを殺してタイムリープの力を奪ったことを思い出す。
「ヒーローか…」
そう呟いて顔を伏せて地面に蹲っている男の子の前にしゃがみ込む。
「大丈夫だ。君は絶対強くなる」
自分の手を見つめ、ホームレスがタイムリープの力は譲ろうと思えば譲れると言っていたことを思い出した真一郎は男の子の手を握る。
.