第60章 愛から生まれた呪い
「オマエがタイムリーパーか?」
ワカの店に訪れた団体客をボコボコにした真一郎は、トンネルの下で路上生活をしているホームレスの元を訪れた。
「教えろ。どうやったら過去に戻れる?」
「ヒャッヒャッヒャッ」
真一郎の問いを受け、不気味な笑い声を上げるホームレス。二人のやり取りを見ていたワカは酔っ払い達の戯言を信じている真一郎をどうかしてると止めようとするが、"うるせェ"と睨まれ、呆れ果ててその場を去って行く。
「オイ、聞いてんのか?」
そう問いかける真一郎に対し、簡単に手に入る力ではないため誰にも譲らないと身支度をしながらホームレスは答える。
「弟を救いたいんだ」
「譲ろうと思えば譲れる。だがそんな事の為に力を譲れと?」
「"そんな事"…?」
自分の思いを"そんな事"の一言で片付けられて怒りを募らせる真一郎を前にして、ホームレスは立ち去ろうとする。
「オレはこの力が欲しくて欲しくて、"前の奴"を【殺して】手に入れた」
ホームレスが力を入手した経緯を知った真一郎は、鉄パイプを手にして背後からホームレスの頭を思いきり殴り付けた。
「オレと同じオマエは殺す事を選んだ」
地面に倒れ込み大量の血を流しながら、不気味な笑い声を上げてそう言うホームレス。
「うるせぇえ!」
何度も鉄パイプで殴り続ける真一郎。
「呪われろ!!呪われろ!!」
「うるせぇええ!!」
グシャッ
狂ったように呪いの言葉を吐いたホームレスを殺害した真一郎は時を遡るように何度も"戻れ"と唱えるが…過去には戻れず。
「なんだよ…ウソじゃん。過去に戻れねぇじゃん。人を…殺しちまったのに」
血に染まった手を震えさせながら、涙を浮かべて真一郎は頭を抱えた。
◇◆◇
次の日の7月30日───。
「ちょっと真一郎君ち寄ってくわ」
「ん?どうしたん?春千夜。」
「ちょっと心配でさ…」
場地と別れ、川沿いを歩いていた春千夜は、雨が降る中、橋の手すりの上に真一郎が立っていることに気付く。
「何してるんだよ!!」
「………、春千夜か。」
急いで橋の上に駆け付けた春千夜に対し、雨で流れが早くなっている川を見下ろす真一郎。
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