第60章 愛から生まれた呪い
そして場地が言った通り、1ヶ月後の7月20日。マイキーは12歳という若さでこの世を去った。
懸命に介護してきたマイキーが死んでしまい、目から大量の涙を溢れさせる真一郎。怒りと悲しみのままに壁を拳で殴るその顔は、まるで般若のような形相だった。
数日後、手に包帯を巻いた真一郎は、マイキーが事故に遭ってからの4年間、万が一でもマイキーが助かるならと、どんないかがわしい物にも手を出したとワカに語る。
「"なんちゃら療法"は全部やった。ヤベェ宗教にも金を払った。どれも嘘っぱちだった。騙された…みんな殺すか…」
話を聞いていたワカは真一郎が先にポックリ逝ってしまうと心配していた為、"自分は正直マイキーが死んでホッとしてる"と告げ、真一郎を自分の組へと勧誘する。
「マドカも心配してたぜ。久しぶりに会ったら死人みたいだったって驚いてた。親友に心配かけさせちゃダメじゃんか」
「……………」
「とりあえず今日は朝まで呑んで、万次郎への餞にしようや」
ワカは自分の店に真一郎を連れて行き、女の子をたくさん連れて来るようにと近くのボーイに呼び掛けるも、団体客が入って店内の女の子が全員指名されたと知らされる。
「でよ!トンネルの下で寝てるオッサンにこいつ小便かけてよ!」
状況を把握して他の店に行くかとワカが呼び掛ける中、騒いでいる団体客の方に目を遣る真一郎。
「そのオッサンさ頭おかしくてよぉ!!『オレは時を戻せるんだ』とかぬかしてさ」
「やばっ」
「『じゃあ今やってみろ』っつったら『トリガーがいねぇと無理』とかワケわかんねぇ事ぬかしがって!時を戻せるってそれタイムリーパーかよ!?」
武勇伝のように話している団体客の話を聞いていた真一郎は背後から団体客に近付く。
「オイ」
「アン!?」
「その話、詳しく聞かせろ」
「オイオイ酔っ払いの戯言だって、真ちゃん」
「なんだテメェコラ!?」
ワカがそう言って止めようとするも、店を出た路地で団体客をボコボコにする真一郎。
「ひっ」
「その"タイムリーパー"の所に案内しろ」
怯えた様子を見せる男に対し、真一郎は狂気に染まった様子で言い放った。
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