第60章 愛から生まれた呪い
視床下部・脳幹は機能しているものの大脳が全く機能しておらず、植物のように自分の意識はなく、ただ生きている状態に等しいと云う。
「治る可能性はあるんですか!?」
「残念ですが…」
医師の返答を受けた真一郎は帰宅すると、マイキーが作り上げたコンコルドのプラモを掴み、床へと叩きつける。
「こんなモノ!!」
そう何度も口にしながらプラモを踏み付け、真一郎は涙を流した。
◇◆◇
それから時は経過し、絶好の散歩日和の中、真一郎はマイキーが乗る車椅子を押していた。
「あれからもう4年か…万次郎(オマエ)ももう中学生だ」
真一郎が呟いた通り、マイキーが植物状態になってから既に4年の月日が経過した。
◇◆◇
「やっと春千夜出所か。1年くらい入ってた?」
「なんでワザワザあんな奴迎えに行くんだよ?日本刀でダチ斬りつけたとかマジ頭イッてるし」
「そう言うなって場地。なんでも万次郎への悪口でキレたって話じゃんか。春千夜(アイツ)らしいよ」
「ふん!」
春千夜に不満を覚えている場地に対し、真一郎は宥めるように言う。そして少年院に到着した二人は出所した春千夜を迎える。
「武臣は未だに『春千夜とは絶交』とか言ってるし、結局オレが迎えに来たんだ」
「そんな事より、マイキーはどうなっんの?」
「……会ってく?」
春千夜を連れ、大谷病院へと向かう事にした。
「ホラ万次郎。1年ぶりの春千夜だぜ」
一年ぶりにマイキーと対面した春千夜は、マイキーの生気のない様子に動揺を隠せないものの、自分が誰か分かるかと話しかけ、腕を握った瞬間、腕の細さに驚愕して思わず手を離してしまい、春千夜はマイキーの豹変ぶりに涙を浮かべてしまう。
「"アレ"はもう…マイキーじゃねぇ…」
真一郎と別れて場地と二人で歩きながら、1年前より酷くなっているマイキーの病状にポツリとそう零す春千夜。
「………、真一郎君が心配だ。気丈に振舞ってるけどお爺さんが亡くなって、エマは家出」
介護資格を取る為に勉強しながら病院で働いている真一郎。寝る暇もなく、本当はボロボロなはずだと推測する場地は病院の窓から見える真一郎を見て心配そうな顔で言った。
「けど…多分、マイキーはもう長くねぇ…」
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