第60章 愛から生まれた呪い
「(どういうこと?守る為に全部捨てた?私の存在を忘れる為に自分に暗示まで掛けたって…。それじゃあまるで…)」
暗示でも掛けないと
私のことを忘れられないみたいな言い方…
「(心が…揺らぎ始める。)」
困った様子で顔をしかめるカノトは複雑な思いでマイキーを見る。
「それでも戻ってきちまったらオレのやってきた事が全部ムダになっちまうじゃねぇかよ!!」
そう声を張り上げるマイキー。
「分かっちまったからだよ!!」
攻撃を避けて荒い息を上げながらもマイキーを殴る。
「最後の最後、死ぬ間際にしか助けを求めらんねぇほどデッケェ深い闇…それをアンタが抱えてる事を分かっちまったからカノトと一緒に戻ってきたんだ。アンタを救いにね」
タケミチは真っ直ぐな眼差しをマイキーに向ける。
「マイキー君、さっき…アイツを守る為に全部捨てたって言ったよな?」
「!」
「黒い衝動に呑まれた自分がアイツを傷付けるんじゃないかって怖かったから、自分に暗示を掛けてまで"アイツに嫌われる自分"を創り上げた。そうすれば…カノトの幸せを守れると思ったから」
「黙れ」
「もし本当にアイツのこと"どうでもいい"って思ってたなら、さっきの言葉は出て来ねぇよ」
それに対して何も言葉は返さず、ただただ酷く冷たい眼でタケミチを見据えるマイキー。
「一体…何がそこまでアンタを苦しめるんだ?」
「知ったところで」
マイキーの片足が持ち上がる。
「どうにもなんねぇんだよ!!」
「(さっきより更に速くなってる!?)」
カノトが驚く中、マイキーの反撃を避けきれず、ガードした腕に攻撃がのしかかる。
「なんでだよ!?2年前オレ達が未来に戻るまではそんなじゃなかったじゃんか!!何があったんだよ!!?なんで何も話してくんねぇんだよ!?」
「(確かに…2年前までは普通だった。別れ際にはプロポーズの約束までしてくれたのに。何があの人を苦しめてるの?どうして…こんな世界線で彼は独りぼっちなの…?)」
「オレはずっと、この"黒い衝動"がなんなのか分からなかった。知ったのはこの前…三天戦争の数日後」
「え!?」
マイキーがタケミチを蹴り飛ばす。
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