第5章 ミッション失敗…?
「まぁ、あんま風邪引いて寝込んだ事ねーし。でもカノに看病されたい!お粥作ってほしいし、“あーん”もしてほしい!うさぎのリンゴも剥いて、オレが眠ってもずっと傍にいてほしい」
「願望丸出しじゃないですか」
「カノが風邪引いてもオレが看病しに行ってやるからさ♪」
「体調管理には気をつけているので平気だと思います。なのでマイキーくんの望みは叶わないかと…」
「じゃあ風邪ひいて」
「無茶苦茶言いますね」
マイキーの我儘に慣れてきた頃かと思えば、“看病をしたいから風邪を引け”と無理難題を押し付けられる。無理だと断れば、“ちぇっ…”といじけてしまった。
「(仮にマイキーくんが私の看病に来たとして…マイキーくんに看病というものができるのだろうか?)」
そんなことが一瞬頭を過ぎってしまった。
「なぁカノ、半間と知り合いだったの?」
「半間?」
「オマエを“勇者チャン”って呼んでた男」
「…いえ、知りません。いきなりそう呼ばれたので驚きましたが…」
「じゃあアイツが一方的に知ってるだけか」
「(あの人を見た時、体がぞくりと震えた。)」
あの狂気じみた笑い
狂喜を宿した目
首に冷たい刃を当てられたような
身の毛もよだつ、悍ましさ───……
「怖い?」
「ちょっとだけ…」
「ならオレの傍に置いといてもいい?」
「え?」
「オマエが恐怖で震えて泣くなら、オレがオマエの傍にいて、半間からも守ってやる」
「!」
「だから…離れないでよ、カノ。オマエがアイツの手に渡ったら…オレは…」
ズク…ッと黒い何かをマイキーから感じた。よく見ると目に光が無く、いつもと様子が違う事に気付いたカノトが名前を呼ぶ。
「…マイキーくん?」
視線をこちらに向けられた時には、目に光が戻っており、気のせいだったのだろうかと少し心配になった。
「カノ、オレにオマエを守らせてよ」
「僕…男ですよ」
「だから?」
「守るとか…そういうセリフは普通女の子に言うんじゃ…」
「関係ないよ。オレが守りたいのはオマエなんだから」
「(胸きゅんセリフ…)」
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