第59章 最終決戦
「海凪ちゃん…」
「相変わらず泣き虫ね」
涙を潤ませて泣くのをグッと堪えているカノトに、ふっと表情を柔らかくした海凪が可笑しそうに笑う。
「礼を言うわカノ。ここに来たってことは、アイツのこと諦めないでくれたんでしょう?」
「………………」
「信じてた。アンタなら絶対にアイツを見捨てないって。もう一度歩み寄ってくれるって」
「…本当は見捨てようと思ったよ。僕の声は届かないし、もう諦めようって。でも…友達の言葉に背中を押されて、もう一度だけ本音でぶつかろうって決めたんだ。だから僕はあの人を助けたい。そんな理由でもいいかな…?」
カノトの『戦う理由』を聞き、その中に込められた想いを知った海凪は、コンテナの上に座っているマイキーを横目で一瞥した後、カノトに視線を戻した。
「いいに決まってる。本音でぶつかることは今のアンタ達にとって必要なことよ。アンタが思っていることを全部、アイツに伝えなさい」
「海凪ちゃん…」
「それでももし、アイツの心に何も響かなければ、その時はアイツに幻滅して、"好きになったのが間違いだった"くらいの潔い気持ちでとっとと見捨てなさい。…大丈夫よ、アンタが寂しくならないようにアタシが側にいてあげるから」
マイキーを裏切ってまで自分の味方でいる事を選んでくれた海凪の決意と覚悟にまた泣きたくなったが、そこはグッと堪え、真剣な表情で海凪を見た。
「君は絶対に死なせない。裏切り者として処分もさせない。僕があの人から君を守るよ」
「!」
「だから必ずこの戦争を終わらせよう!」
「えぇ、もちろんよ」
海凪も力強く頷いた。
「さて、まずは…」
二人が同時に視線を向けると、半間は海凪を見て鬱陶しげに言葉を吐いた。
「"戦乙女"か。厄介な女だな…。せっかくあと少しで勇者チャンを捕まえられそうだったのによぉ…邪魔すんなよ」
「アンタのその執着は異常ね。嫌がるこの子に何度も迫って、怯えさせて。」
「怯える?いつだってオレは勇者チャンに優しくしてきた。怯えさせた事なんか一度もねーよ」
「目腐ってんじゃないの。さっきのこの子の怯える表情見てもそんなこと言えるわけ?」
.