第5章 ミッション失敗…?
「(もしドラケンくんも助からなくて…兄さんの死も救えなかったら…私…)」
そう考えただけで体が震えた。
「(怖い…私はもう何も失いたくはないのに───!!)」
すると握った拳の上から掌が重ねられる。驚いて隣にいるマイキーを見たが、彼はこちらに顔を向けないまま、何も言わなかった。
「……………」
そっと重ねられた手はあたたかい。涙ぐみそうになるのをグッと堪え、カノトも手術室の明かりが消えるのを待つ。
「(ドラケンくん!お願い!)」
神様────!!
一度恨んだ神様にもう一度縋ってみる。
何時間経ったのかは分からない。待合室は静けさに包まれていた。
「!!」
その時、パッと明かりが消え、全員が立ち上がる。
「手術が終わった…」
扉が開き、中から医師達が出てきた。全員が緊張した面持ちで医師からの言葉を待つ。
「…一命は取り留めました」
「へ?」
「手術は成功です」
それを聞いた瞬間、ホッとしたのか、ほとんどの者が涙を浮かべて喜んだ。すると一人、マイキーはみんなから離れ、どこかに行ってしまう。
「(マイキーくん?)」
「よ───っしゃああああ!!!」
タケミチが大声で叫ぶ。
「やったぁー!!!ドラケン君が助かった!!!」
カノトも涙を浮かべ安堵したように笑った。
✤ ✤ ✤
「わー雨上がってる」
外に出るともう雨は止んでいた。
「あ、どうしよう!!こんな時間だ!!」
「もう8月4日じゃん」
「え?」
「8月4日…?0時…過ぎた?」
二人は顔を見合わせる。
『8月3日、龍宮寺堅を救う!!』
『それが今回のミッションです!!』
ペタンとタケミチは身体の力が抜けたように座り込んだ。
「タケミチくん…乗り切ったよ」
「っ…………」
「8月3日が終わった…」
「あぁ…」
その声は震えている。
「“ドラケンを守る”」
「ミッション成功だよ!!!」
嬉しさがぐっと高まり、二人は涙を流す。
「(本当に良かった!奇跡は起きた!)」
喜びを噛み締めているとカノトはマイキーの姿がないことに気付く。
.