第58章 かつての仲間と共に
「そうだよ千咒。言ったでしょ?諦めるにはまだ早過ぎるって」
立ち上がったカノトは千咒の前に立ち、にこりと笑む。
「僕だってたくさん失敗してきた。その度に後悔して絶望して挫折した。それでも、今こうして失敗を乗り越えてここに立ってる。失敗ばかりの人生だっていいんだよ、千咒!」
「!」
「それに、僕とあの人の関係が壊れたのは君のせいじゃない。僕を傷付けない為にあの人は決別する事を選んだのに僕は彼の面影を追った。その結果、黒い衝動に呑まれたあの人に殺されそうになった。僕の自業自得なんだよ」
「…オマエはまだ、アイツが自分のところに戻ってくるって、信じてるのか?」
「………、どうだろ。もしかしたらもう戻って来ないかもしれない。それでも僕はもう一度だけあの人と本音でぶつかってみようと思ったから、タケミチくんと一緒に戦う事を決めた」
「カノトとマイキー君は喧嘩中なんだ」
タケミチがニッと笑んで茶化すように言う。"喧嘩中?"と不思議な顔をする千咒に対し、"だから喧嘩中じゃないんだよなぁ…"と苦笑を浮かべるカノト。
「タケミチくんの言う通り、ひっくり返せるんだよ千咒。まだ君は自分の足で前に進める。僕達が諦めたら本当にそこで終わりなんだ」
「だから、千咒。オレたちと一緒に行こう。関東卍會をひっくり返しに行こうぜ!」
二人の言葉に勇気づけられた千咒は、もう一度立ち上がることを決め、晴れやかな表情で笑った。
◇◆◇
1週間後───8月31日。
「これより二代目東京卍會、決起集会を始める!!!」
副総長を務める千冬の宣言で、2年振りに集会が執り行われる。
そこには元東卍である河田兄弟、ぺーやんとぱーちん、八戒と三ツ谷、千堂達に加え、壱番隊隊長を務める乾と伍番隊隊長を務める千咒の姿もあった。
「(この感じ、懐かしい…)」
二代目東京卍會で総長補佐を務める事になったカノトはタケミチの隣に立ち、階段の上からみんなの姿を見渡すうちに、マイキーがいた頃のような集会の雰囲気を思い出していた。
「まずはみんなに謝りたい…巻き込んですまない」
総長としてみんなの前に立ち、開口一番で巻き込んでしまった事に対して謝罪するタケミチ。
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