第58章 かつての仲間と共に
「お前が最強を目指した事で兄弟がおかしくなっちまったって」
「え?」
「(どういうこと?)」
「でもオレが狂ってったのも、春千夜が出て行ったのもオマエのせいじゃない」
「違うんだ…兄貴…ずっと…隠してた事があるんだ。春千夜があんなヤベぇ奴になったのも、マイキーの"衝動"も…全部ジブンの責任なんだ」
突然の告白に驚いて固まるカノト。
「それって…どういう事だよ!?千咒!!」
タケミチは驚きを隠せず経緯を尋ねる。そして千咒は思い出を振り返りながら、昔話を語り始めた。
小さい頃からマイキーと場地と春千夜はいつも一緒で、いつも千咒は三人の後ろを追いかけていた。
そしてあの日、マイキーと春千夜が変わった。
事の発端は、マイキーが1ヶ月もかけて作り上げたコンコルドのプラモを千咒が壊したことだった。
マイキーから絶対に触るなと強く釘を刺されていたのにも関わらず、三人のいない隙に千咒が勝手に遊び始めて転んだ拍子に壊してしまい、犯人を兄である春千夜のせいにした。
"ハル兄が壊した"
なんで嘘をついたのか覚えていない。まさか自分の嘘が原因であんな大事になるなんて、あの頃の千咒は思っていなかった。
『オイ!!やめろよ!!』
場地の声を聞いて慌てて駆け付けると、そこには口が裂けた春千夜と倒れた場地、そして手が血で染まったマイキーが立っていた。
『笑えよ春千夜』
「三天戦争でのマイキーを見て確信した。あの時と同じだ、あの時の眼!!あの日からみんな…変わっちまった」
「千咒…」
「…だから、ジブンがなんとかしたかった」
「………………」
「でも…もう手遅れだよな…」
千咒は隣に座っているカノトを見る。
「ジブンがあの時ちゃんと謝っていれば、マイキーの黒い衝動は生まれなかった。オマエが傷付く事もなかった。オマエとマイキーの幸せが壊れたのはジブンのせいだ…」
「千咒…」
「失敗ばかりだ」
自責の念に駆られる千咒は涙を浮かべる。
「ひっくり返せるさ」
「え?」
タケミチは大きく息を吐き…
「オレなんてもっと失敗ばっかだぞ!!?千咒!!でもひっくり返せる!!!」
声を張り上げて叫んだ。
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