第58章 かつての仲間と共に
「オレ、三天戦争でマイキー君に負けて、絶望したけどここに立ててる。オレなんか総長の器じゃないのはわかってるし…東卍の総長はやっぱりマイキー君だ」
「………………」
「でも三天戦争で思い知った。もうマイキー君は別人だ。もうあの頃のようなマイキー君は取り戻せない」
タケミチの話を聞きながらカノトは静かに目を瞑る。意識したわけじゃないのに、東卍の特攻服を着て笑うマイキーの顔が思い浮かび、閉じていた目をゆっくりと開けた。
「(完全に忘れることなんてきっと出来ないんだろうな…。もう想うのをやめるなんて言っておきながら、まだあの人のことを無意識に思い出してしまうなんて。)」
それほどまでに自分の中でマイキーの存在は大き過ぎたのだと思い知らされる。簡単には忘れさせてくれない男(ひと)。複雑な気持ちを抱き、眉を下げて悲しげに笑った。
「けどオレはマイキー君に勝ちてぇ!!」
「(うん、私もあの人にぶつかりたい。)」
「これから関東卍會をぶっ潰しに行く!!オレは絶ッ対ェ勝つ!!負けたままじゃ終わらせねぇ!!だからみんなも諦めていたものを取り戻そう!!」
「(諦めていたもの…。)」
メンバーを前にしてタケミチは叫ぶ。その言葉に共鳴するようにカノトの顔つきもより一層真剣なものへと変わる。
「これはオレだけじゃない。"オレたち"のリベンジだ」
こうしてカノト達の最後のリベンジが今幕を開けようとしていた。
◇◆◇
9月9日──最終決戦当日。
「キャシー、いい子にしていてね」
特服に身を包んだカノトは部屋にいたキャシーの頭を優しく撫でる。
「…ねぇキャシー。タイムリープする前の私ね、まるで死んだように生きてたの。兄さんのいない世界を独りぼっちで過ごしてた」
尻尾をゆらゆらと揺らしながらキャシーはカノトを見上げる。
「でも彼と出逢って恋をして、知らない世界をたくさん見ることができた。あんなに愛されたのは初めてで…とても嬉しかったの」
「本当はあの人の本音を聞くのが怖い。でも…もう一度だけあの人のために頑張る自分を許そうと思う──じゃあ、行ってきます」
立ち上がったカノトは笑顔を向け、部屋を出た。
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