第58章 かつての仲間と共に
「どんなに最高の賞でもさ…一緒に笑って喜んでくれる仲間見捨てるなら、そんなモンクソ以下だ!」
ドラケンとの約束を守るためにデザイナーの道へと進んだ三ツ谷だが、仲間と一緒に戦う事を選んでくれた彼の想いに、カノトは涙を潤ませて笑った。
そして会場は最悪な空気に包まれた中、日本服飾文化新人賞は終了したのだった。
◇◆◇
「どうした?千冬。そんな改まって。」
「(千冬くん…一体どうしたんだろう?)」
D&Dにいたカノト達を連れて、三ツ谷を公園に呼び出した千冬は真剣な表情で三ツ谷にこう告げた。
「三ツ谷君!オレの代わりにこのチームの舵取りをお願いできませんか?」
「!!」
予想もしてなかった千冬の言葉にカノト達は目を見張って驚いた顔を浮かべる。
「?というと?」
「やっぱりオレに参謀は力不足です。三ツ谷君が相応しい!」
「「千冬!!」」
千冬の言葉に同意するようにタケミチと八戒は笑顔を見せてウンウンと頷いている。
「(さっきまで誰が千冬くんにチームのデザイナー兼参謀はクビだって言うかで揉めてたのに、まさか本人から交代を申し出るなんて。)」
千冬のセンスは褒められたものじゃなかった。今着てるTシャツのロゴもそうだが、"サウザンドウィンターズ"という名前もセンスが無い。正直誰かが言わなければいけないと話し合っていた矢先、本人の方から提案されるとは思わなかった為、驚きを隠せなかった。
「オッケー!!引き受けた。じゃあ服とかロゴとかオレが一からデザインするわ。チーム名も変えよ!」
「え!?」
「(まぁ…そうなるよね。)」
「それはちょっと。一生懸命考えたし」
「これから関東卍會とやりあうんだぜ?もっと真剣にいこうぜ!」
「!!?真剣ですけど!?」
追い討ちを掛けるようにトドメを刺された千冬は"ズーン…"という効果音と共に肩を落として落ち込んだ。
「カノ」
「?」
「飯、作ってくれてアリガトな。すげー美味かった。あと心配してくれたのに酷い態度取っちまってマジで悪かった」
三ツ谷が申し訳なさそうな顔で謝罪の言葉を述べた為、カノトは軽く首を横に振った。
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