第58章 かつての仲間と共に
「すごい…」
《天に駆け上がり、名声を求める龍を軽いカシミアのレースで。》
「(これが…三ツ谷くんの想いの作品。)」
《そして地に落ち、愛を求め彷徨う龍を重いベルベットで表現した作品。》
「(ドラケンくん、見てますか?)」
カノトの目に涙が浮かぶ。そして全てのエントリーが終了し、最優秀賞が発表される。
《今年の優勝者はエントリーナンバー15。三ツ谷隆さんです!!!!》
「(三ツ谷くんはやっぱり凄い人だ。)」
《壇上へどうぞ!!》
「(不良の世界にいるべきじゃない。服飾‹こっち›の世界で活躍すべき人だ。)」
会場内が歓声に包まれる。だが、現れた三ツ谷の服装を見て言葉を失う。
「(え…?)」
東京卍會の特攻服を着て登場した三ツ谷に、その場にいた全員が驚きと戸惑いの声でどよめき出す。
「え?」
「何?あの格好」
右の米神には龍(ドラゴン)のタトゥーが入っており、それを見たカノトはドラケンの顔が思い浮かんだ。
「(三ツ谷くん…どうして!?)」
《この度は新人賞を授与していただき、誠にありがとうございます。》
会場がざわめく中、マイクへと近付き、新人賞を授与してもらった事にお礼を言う三ツ谷。
《先日、お節介な後輩が訪ねてきた。そいつはオレにこう言った。"大事な奴を助けるために戦いにいく"と。》
「(私のこと?)」
《カノ、タケミっち。オレも連れてってくれないか?》
「「え!?」」
観客席にいた二人は、三ツ谷の突然の言葉に驚いた顔を浮かべる。
《オレは…この賞を辞退します。》
「「えーーー!?」」
《手伝ってくれたみんなすまない。選んでいただいた審査員の先生方も…》
「ふざけるな!!この由緒ある賞をなんだと思ってるんだ!!正気か貴様!!」
頭を下げる三ツ谷だが、賞を台無しにした事に怒りが治まらず、罵倒が飛び交う。
「未来を棒にふる気か!!?」
「ふざけんな!!」
「茶番か!!」
壇上にいる三ツ谷に向かって物が投げられる中、下げた頭を上げた彼は、静かに言葉を続ける。
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