第58章 かつての仲間と共に
「(そっか。だから約束を守る為に三ツ谷くんは急いでるんだ…デザイナーへの道を──。)」
既に帰ってしまった三ツ谷からドラケンに言われたことを明かされたカノトは、ポケットから携帯を出し、タケミチに電話を掛け現状を伝えた。
「……──というわけで三ツ谷くんは誘えない。うん…それが一番良い。僕達は三ツ谷くんの夢を応援しよう」
◇◆◇
あれから一週間後──……
「いよいよだな!」
「おう!」
「三ツ谷くん優勝できるといいね」
カノト達は三ツ谷が目指している『日本服飾文化新人賞』の会場へとやって来た。
《これより2008年度、日本服飾文化新人賞選考会をはじめます。》
「あードキドキする」
「何でタケミチくんが緊張してるの」
「三ツ谷君何番目?」
「えっとね」
会場入りした後、すぐに選考会が始まり、作品を身に纏ったモデル達がスポットライトを浴びながら歩いてくる。
「うわー!!華やかー!!!」
「どの服もすごく綺麗…」
「「かっけー!!」」
それぞれの作品の完成度に感嘆の声を上げる四人。
「やるなーオレのセンスに負けてねぇよ」
「千冬…いい加減にしてくれ」
「ここまで鈍感なのも困りものだね」
未だに自分のクソセンスに気付いていない千冬に、三人は引いた反応を示す。
「三ツ谷君、優勝できるかな?」
「ちょーハイレベルな大会なんでしょ?」
「タカちゃんは勝ーーつ!!」
「どの服も圧倒的に凄かったけど、三ツ谷くんの服に込めた想いは僕達が知ってる。大丈夫、三ツ谷くんを信じよう!」
《続いての作品はエントリーナンバー15、三ツ谷隆さん。》
作品の発表は進み、ついに三ツ谷の作品が登場する。ドキドキを抑えきれないタケミチに緊張するなと言っておきながら、カノトの心臓もドキドキと鼓動を打ち、その顔からも緊張の色が滲み出ていた。
「きゃータカちゃん来ちゃうよ!!どうしよ千冬!!」
「うっせーよ!」
「二人とも静かに」
《テーマは『双龍』。》
「(!…双龍。)」
二人のモデルが身に纏った服は、空を舞う二匹の龍をイメージしたようなデザインだった。
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