第58章 かつての仲間と共に

「…なら誰がオマエの傷付いた心を癒してくれんの？」



「誰も癒せないから時の流れに任せるの」



「………………」



時の流れに任せたくらいで心の傷が癒えるとは到底思えなかった。自分にはヒナという大事な存在がいるように、カノトにもマイキーという大事な存在がいて、彼がカノトの傷付いた心を癒してくれると思っている。



「カノちゃん」



「どうしたの？」



「オレの我儘聞いてくんねぇかな」



「我儘？」



「もう一度オレと一緒に戦ってくれ！」



「！！」



決意の揺るがない強い眼差しを向けられ、カノトは一瞬狼狽えた。



「ココ君から聞いたよ。マイキー君が本気でオマエを傷付けて殺そうとしたこと。オマエが本気でマイキー君との関係を終わりにしたこと」



「………………」



「胸が張り裂けそうなほどすげぇ辛くて苦しい決断だったと思う。でもオレは…カノちゃんらしくねえと思う！」



「僕らしくない…？」



「今までのオマエなら何があってもマイキー君を見捨てなかったじゃん。どんなに冷たく突き放されても絶対挫けなかった」



「それは…」



「それって全部マイキー君を信じてたからだろ？」



タケミチに静かに諭され、カノトは何かに堪えるようにグッと顔を歪める。



「あの時は…まだ信じる気持ちがあったんだよ。でも今はもう、彼の気持ちが全然分からない。何も信じられないんだよ」



「なら分かるまで何度もぶつかればいいじゃん！信じられないなら信じられるまで何度も話し合えばいいじゃん！」



「！」



「それでもあの人の心を動かせなかったら、その時は潔く諦めればいい」



「タケミチくん…」



「まだ会ってたったの1回だぞ？その1回でアレがマイキー君の本音全部だって思ってるわけじゃないよな？」



交わした言葉は少なかった。真っ向から邪魔な存在だと否定され、自分のことなど好きでも何でもないと拒絶された。



「(今更どうしろって言うの？彼に拒絶された時点でアレが全て本音なんじゃないの？)」



「オレ、知ってるんだ。二人がお互いのことどれだけ大事に想ってるのか」



タケミチは真っ直ぐ前を見たまま、嬉しげな声色で二人のことについて語り始めた。



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