第58章 かつての仲間と共に
「一人で戦うって…」
悲壮な決意を聞いて目を見開く。膝の上で握っていた掌にグッと力を込め、タケミチに問いかける。
「僕も巻き込みたくないの?」
「オマエは現代(みらい)にいる時からオレを支えてくれてるだろ。余計に巻き込みたくなかった。今回はオレ一人で決着をつけるつもりだったんだ」
「"だった"ってことは…思い留まったんだね」
「オマエの怒り顔が過ぎったからな」
「当たり前だよ。もし一人で戦うことを決めていたら、僕は君を怒ってた」
「だよな。オマエはそういう奴だもんな」
「──あ!ボールが…!!」
離れた所で子供の声が聞こえた。どうやら蹴ったボールが変な方向に飛んでしまい、二人のいるベンチまで転がってきた。
「お兄ちゃんたち〜!!ボール蹴って〜!!」
立ち上がったカノトは地面に転がったボールを片足で蹴り、子供達のいる場所まで飛ばす。
「ありがとう〜!!」
片手を振ってお礼を言った子供はまたボールを蹴って遊び始めた。優しい風が靡く中、カノトの後ろ姿を見るタケミチはふと思った。
「(コイツ後ろ姿もイケメンなんだよな。日本一のイケメングランプリとかあったら間違いなく優勝だわ。女の子達が惚れるのも分かる…。)」
「タケミチくん」
「!」
「ちゃんと泣けた?」
「え?」
振り向いたカノトの言葉に呆気に取られたタケミチは驚いた表情を浮かべる。
「はは…マジで何で分かるんだよ」
「そりゃ君とは長い付き合いですから。君の抱えてるモノも自然と分かるんですよ」
「カノちゃんには適わねぇなぁ…。何度も言うけど前世は絶対エスパーだな」
「だから人の心までは流石に読めないって」
クスクスと可笑しそうに笑うカノトを見たタケミチにも小さな笑みが浮かぶ。
「ヒナちゃんがいてくれて良かった。やっぱり彼女は凄いね。タケミチくんが無理してること見抜いてるんだもん。心がしんどい時に誰かが傍にいて癒してくれるって素敵だね」
「…オマエの心の傷は癒えたのか?」
「時間と月日が癒してくれる」
「そんなんで癒える訳ないだろ。なぁカノちゃん、本当はマイキー君に…」
「それはないよ」
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