第58章 かつての仲間と共に
「言ったでしょ、もう別れたって。面影を追うのはやめたんだ。いつまでも縋るのは相手にとっても迷惑だからね」
淡々と話すカノトの顔色を窺う陽翔。本当に辛さなど感じず、むしろどこか吹っ切れたような顔つきにも思えた。
「次は君達といろんな世界を見に行きたいな」
本人も対して気にしていない様子だったので、これ以上は追求しないことにした。
「仕方ねぇからアイツも仲間に誘ってやっか。遊びに行きたい場所あんなら決めとけよ。もちろん俺もお前らを連れ回す気でいるからな!」
「楽しみにしてる」
「じゃあ俺もう行くわ。早く怪我治して学校でまた会おうぜ。お前がいねぇとつまんねぇ。」
「本当に寂しがり屋だね」
「ちげぇわ!!人をウサギみたいに言うな!」
「あはは」
「ったく…」
呆れながら笑う陽翔は椅子から立ち上がり、"じゃーな"と片手を挙げて病室から出て行った。
「………………」
扉が閉まると先程まで騒がしかった病室が嘘のように静けさに包まれる。陽翔の姿が見えなくなると、カノトはふと笑みを消し、窓の外に顔を向けた。
「ドラケンくんとの約束…守れなかったな」
『何があってもアイツを見捨てないでくれ。ずっと傍にいてやってくれ。そんで…二人で幸せになれ。約束してくれるか…?』
「(私がどれだけ想っても、あの人が私を拒絶し続ける限り、永遠に心を動かすことはできない。)」
マイキーのことを託されたのに、その約束を諦めたことに申し訳なさを感じ、心の中でドラケンに謝罪をした。
その夜、スタンドライトの明かりを頼りに読書をしていると、突然大きな音が響き、驚いて窓の外に目を向ける。
「…花火」
たくさんの綺麗な花火が空一面に打ち上がり、その彩りの美しさに釘付けになった。
「(そういえば…過去に来たばかりの頃、あの人と一緒に屋上で花火を見たっけ。)」
コンビニに行く途中で偶然マイキーに会い、エクレアを半分こして、屋上で花火を見た。その時からマイキーに見蕩れていたことを思い出し、悲しげにふっと笑った。
「懐かしいな」
派手に咲いては儚く散っていく花火を見た後、カノトは読みかけの本に視線を戻し、静かにページを捲った…。
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