第57章 私の知らない貴方
「……………」
「!」
その時、ふとマイキーの視線が隣にいたカノトを映す。目線が合わさった瞬間、嬉しさと喜びと驚きと戸惑いでカノトの瞳が揺らいだ。
「………あ、」
まさかこちらを見ると思わず、言葉を発する事さえ忘れてしまう。開きかけた口で漸く出てきた言葉は短く、狼狽えていると、マイキーの視線が外れ、サウスに戻される。
「("興味ない"って顔…。久しぶりの再会だって言うのに貴方の瞳は私を映していない。今の貴方は…孤独を抱えながら生きてるんだね。)」
感動の再会は期待してなかった。ただ、光を無くした眼でも、ほんの少し、自分の姿をちゃんと映してくれたらいいと思っていた。
「(覚悟はしてたつもりだったけど…やっぱり好きな人の瞳に映らないって、辛いな…。)」
ズキズキと心が痛む。切なげに目を伏せ、カノトは胸辺りの服をギュッと掴んだ。
「いくぞマイキー!!!これがこの追悼抗争(レクイエム)のフィナーレだあ!!!」
サウスは拳を握り締めるとマイキーに殴り掛かる。同時にマイキーも片足を振り上げ、サウスの顔面に一撃を放つ。
「…止めないと」
「カノト?」
「早く二人を止めないと…!!」
マイキーの強さは昔から知っている。喧嘩の強さは天下一品と評される程の実力者で、核弾頭のような最強の蹴りで何人もの敵を倒してきた。
だからどれだけサウスが強くても、どれだけ力を振るおうとも、黒い衝動を発動させながら戦うマイキーに勝てないことは、知っていた。
「このままじゃ"彼"が…!!」
サウスの顔半分が酷く腫れ上がり、大量に出血している姿を見て、サッと顔を青ざめる。
「(万次郎くんが人殺しになっちゃう───!!)」
バッ
「もうやめましょうマイキー君!!!!」
「…タケミチくん」
「これ以上やったらサウスが死んじまう!!!」
戦いの最中、サウスを庇うように両手を広げ、二人の間に割って入るタケミチ。
「オマエも壊すしか能がねぇんだろ?」
タケミチの姿など目に入っていないかのように、マイキーはサウスに言葉を投げかける。
「だったらオレが壊してやるよ」
冷たさを纏ったマイキーにカノトの体が震えた。
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