第1章 タイムリープ
2017年───7月6日
「タイムリープ。この君たちの“能力”についてボクなりの“見解”がある」
ナオトが淹れてくれた珈琲に砂糖とミルクを加えてから飲めば、甘党なカノの口内で甘さが広がった。
「まずタケミチ君、君は2017年7月4日から2005年7月4日にタイムリープした。つまり君の能力は、12年前の“同じ日”に戻るというものだと分かります。そしてカノさん…」
「!」
「貴女の場合は“能力”というより“条件が揃っている時”にタイムリープが可能なんです」
「どういうこと?」
「まず貴女も2017年7月4日から2005年7月4日にタイムリープしました。ただしそれは今も言ったように“条件付き”でです」
「その条件って言うのは…?」
「貴女は『タケミチ君が近くにいる時』だけ一緒にタイムリープが可能になります」
「オレ?」
「例えば“貴女の視界にタケミチ君が入っている時”や“貴女の隣にタケミチ君がいる時”など。まだ詳しい事は分かりませんが、とにかくカノさんのタイムリープする条件はタケミチ君です」
「そっか…線路に落ちたタケミチくんが視界に入っていたから一緒に過去にタイムリープしちゃったんだね」
「カノさん」
「ん?」
「職場に連絡は取れますか?」
「え?どうして?」
「今から貴女とタケミチ君にはこの部屋で調べてもらいたいことがたくさんあります。その為には最低でも二日は家に帰れません」
「うーん…それは難しいかも。知ってると思うけど私、看護師でね、凄く忙しいの。お昼ご飯もゆっくり食べられない程だし」
その時、カノのスマホが鳴った。
「あ…病院から…」
「代わって頂けますか?」
「う、うん…」
ナオトにスマホを渡すと代わりに電話に出る。自分の身分を最低限で明かした後、何やら事情を説明していた。
不安げにそのやり取りを見守っていたカノだったが、しばらくしてナオトはスマホを返してくれた。
「どうだった…?」
「病院から許可が出ました」
「え!?お休み貰えたの!?」
「はい」
「…ちなみにどうやって説得したの?」
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