第56章 彼の運命
「その中でもアイツはカノの幸せを願ってた。オマエの幸せが壊れねぇように、ずっと笑顔で笑っていられるように、アイツはずっとオマエを守ってたんだ」
「!」
「あのバカ…」
そしてドラケンは吹っ切れたように笑う。
「確信したよタケミっち、カノ。オレのやってる事は間違ってねぇって」
そうして三人はドラケンの部屋を出た。
「そしてオマエらが梵に入ったって事は、もうオマエらの知ってる未来とは違ってるハズ」
「(…そっか。私達はもう過去を変えてるかもしれないんだ…)」
「こっから先は何があるか分かんねぇ…覚悟はできてるな!?オレたちでマイキーを取り戻す!!」
「「ハイ!!」」
既に覚悟を決めていた二人はドラケンの言葉に力強く返事を返した。
「キャッ!!?」
「ああっ」
「あー!!ゴメーン!」
廊下を歩いているとネグリジェ姿のキャストの女の子とタケミチがぶつかり、持っていたトマトジュースがTシャツに飛び散り汚れてしまう。
「ハハ、血みてぇだなタケミっち」
「ホントだー」
「早く洗い落とさないとシミになるね」
「ヤダー、洗うから脱いでー」
「ん?血みたい?」
何気なく言ったドラケンの言葉に引っ掛かりを覚えたタケミチは自分の手のひらにべっとりと付いたトマトジュースを見る。
「(これって…さっき見たビジョン!?)」
「驚いた顔してどうかした?」
「これってもしかして…未来が見えてるのか…?」
「(やっぱり、タケミチくんが見た謎のビジョン…あれは未来を視る能力なんだ。私の予想は当たってた。)」
「カノト…」
タケミチが困惑した顔でこちらを見る。それに対してカノトはハッキリと頷き、タケミチが未来を見通す能力を手に入れたことを目で訴えた。
「(そういえば千咒が血を流して倒れてるビジョンを見たって言ってたな。もしそれが本当なら色々と注意しておかないと。)」
いくら千咒が最強と云えど、回避できない状況に追い込まれた時、タケミチが見た未来のようになるかもしれない。それだけは絶対に避けなければとカノトは強く決めて、手のひらをギュッと握り締めた。
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