第56章 彼の運命
2008年7月7日───。
「梵の集会こんな普通のビルでやるんスか?」
ドラケンに連れられ、二人は梵の集会が行われる普通のビルにやって来た。
「(随分と厳重なセキュリティなんだな。)」
地下に続く階段を下りた先には、作動中の監視カメラと暗証番号を正しく打ち込まないと開かない装置が付いたドアがあった。
「(この先が梵のアジト…)」
そしてドアが開いた途端、凄まじい歓声が聞こえ、二人は目を丸くして驚きの表情を見せる。
「え!!?何やってんスか!?コレ!!」
「殴り合いの喧嘩…?」
にしては盛り上がりすぎてるような…?
「ドラケンくん、これって…」
場内の中央には上半身裸の男二人が互いを殴り合い、ボロボロの状態だった。
「"B-1"、梵主催の地下格闘技」
「え?今日は集会のハズじゃ…」
「毎夜ここで試合が行われ、金持ち共がモニター越しに観戦して金を賭ける。"B-1(コレ)"を生業にして、より優れた精鋭部隊を創り上げる。それが超戦闘型愚連隊"梵"だ」
「……………」
「カノが見て気分のいいモンじゃねえだろ?眉間にシワ寄ってンぞ。」
眉をグッと寄せて顔をしかめるカノトを見て苦笑するドラケンは自分の眉間を指す。歓声を浴びる中でカノトは試合から目を逸らさず、不機嫌そうな声で言った。
「今頃モニターの向こう側で金持ち共がお酒やつまみを片手にせせら笑いながら試合を観戦してるんだと思うと、正直胸糞悪い気分ですね」
「これが梵のやり方だ。それを分かってて試合に参加してる奴もいる。まぁ…オマエの気持ちも分からなくはねぇけどな」
「そこまで!!!」
場内に響いた声で、殴り合っていた二人の動きがピタリと止まる。
「カメラを切れ!!今日の試合はこれで終わりだ!!」
フードを頭まで被った小柄な少女が階段を下りて行く。
「そして精鋭部隊の中でも、最強にして頂点に君臨するのが──」
「千咒!!」
「千咒!!」
「千咒!!」
「瓦城千咒。」
千咒が登場した途端、スポットライトが彼女に向けられ、場内は千咒コールで盛り上がる。
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