第56章 彼の運命
「それでもアイツの帰る場所はいつだってオマエの所だ。オマエが諦めねぇ限り、必ずアイツにオマエの声は届く。だから…離れちまったアイツの手をもう一度繋いでやってくれ、カノ」
「はい!」
力強く返事をしたカノトを見て、黙って聞いていたタケミチの顔にも笑みが浮かんだ。
「カノちゃんと最後に会ったマイキー君、痩せてたんだろ?寝てないのかひどいクマだって言ってたもんな」
「うん。それと"梵天"って犯罪組織を率いてました。自分の中の"黒い衝動"を抑えられないって」
「…"黒い衝動"」
「でもヒナは助かって、死んだハズの他のみんなも元気にしてて」
「マイキーくん、2年前に約束してくれたんです。"12年後また逢う日まで東卍のみんなもマドカさんもオレが絶対に守ってみせる"って」
「約束どおりの未来です。マイキー君だけが不幸だった」
マイキーが守ってくれた未来は、二人が望んでいた世界だった。大切な人がそこにいて、普通の日常を生きている。でも…未来を守ってくれた本人だけが孤独を抱え、独りぼっちで生き続けている。
「…なるほど。"黒い衝動"か…」
「……………」
「アイツは2年前からその12年後(みらい)を見越していたんだな」
「!」
「だからマイキー(アイツ)は仲間(オレら)を遠ざけた…。キズつけた。オレらは心底マイキーが嫌いになったよ」
「(え!?そんな事が!!?)」
「(きっと"黒い衝動"のせいで仲間が傷付くのは嫌だったんだ。だから敢えて嫌われ役になって自分の側からみんなを遠ざけようとした。)」
やり方は正しいとは言えないが、誰よりも仲間を大事に思っているマイキーだからこそ、その方法しか選べなかったのだろうと思った。
「"黒い衝動"がなんなのかは分からない。けどアイツがオレらを突き放した事によって、オレらはまともになった」
「(どこまでも優しい人…。)」
「もしかしてアイツは、嫌われて恨まれて、自分を犠牲にしてオマエらとの約束を守ったんじゃないか?」
「オレらとの…約束の為に…?」
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