第56章 彼の運命
二人がコルクボードに貼られた写真に近付き、懐かしさに顔を綻ばせている姿を見てドラケンは微笑ましそうに笑う。
「!」
その中の1枚の写真に目を留める。
「(私と万次郎くんの写真だ。)」
楽しそうに笑い合う二人の姿が写っていた。お互いの首には色違いのネックレスが下げられていて、どこからどう見ても幸せそうな恋人だ。
「マイキー君幸せそうだな」
「うん…」
「オマエのことが心の底から大好きなんだって気持ちが写真からでもすげぇ伝わる」
「(この写真の万次郎くんは幸せそうに笑ってるけど…未来の万次郎くんは…全然幸せそうじゃなかった。)」
「あ……」
タケミチの視線を追うと、そこには今でも忘れられない少女が笑顔で写っている。
「(エマちゃん…)」
「今でも夢でエマが言うんだ。『マイキーを助けて』ってよ」
「ドラケンくん…」
ベッドに腰掛けたドラケンが静かに語り始める。
「オレはマイキーを見捨てられねえんだ」
「(だから梵に…)」
「…教えてくれ二人とも。未来のマイキーはどうだった?」
その質問に気まずそうな顔を浮かべたタケミチはチラリとカノトを横目で見る。ドラケンの言葉にカノトは最後に会ったマイキーとの最後を思い出しながら静かに口を開いた。
「…未来のマイキーくんに銃で撃たれて殺されそうになりました」
「は!?銃で撃たれた!?」
「僕がどんな言葉をかけてもマイキーくんには届きませんでした。むしろ…彼はそれを煩わしそうにしていて、笑顔すら浮かべていませんでした」
「マイキーが…カノを…」
昔からカノトに依存し、周りが思わず引いてしまうほどの重い愛をこれでもかと云うほどぶつけてきたマイキーを知っているからこそ、ドラケンは今のカノトの話を聞いて驚きを隠せなかった。
「僕との関わりを完全に断った彼は、本気で全てを終わらせようとした。繋がりを捨てたんです。だから迷わず僕を撃つ事ができた」
『もうオレに関わるな』
「……………」
何の感情も籠らない、凍えそうな程の冷たい声が今でもハッキリと耳に残っている。
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