第56章 彼の運命
「タケミっちが初めてうちに来た時と同じ反応だな。オレさ、本当の両親いねぇんだ。ここにいるヤツらみんなに育てられたようなモン」
「(壮絶な生い立ちをサラッと…)」
「二人とも!オレの育ての親の正道(マサウェイ)さん!」
「あ!どーも!」
「お、お邪魔します」
「おう、前にも来た事あんな。そっちの美形の兄ちゃんは初めましてか」
新聞を読んでいた正道はタケミチからカノトに視線を移す。
「ケン坊、こんなイケメンどこで捕まえてきた?明らかにこの世界とは無縁のタイプだろ」
「捕まえてねーよ。コイツはオレのダチ。あと優等生タイプに見えるけど実はすげぇ喧嘩強いから」
「へぇ…人は見かけによらないな」
"ゆっくりしてけや"という正道のもてなしにカノトとタケミチは頭を下げた。
「ケンクン。今日も送りよろしくね」
「おー」
「ケンクーン。後で相談のってくんない?」
「おー後でなー」
「今日こそ腹筋触らせろ❤︎」
「ヤダ」
「つかえらいイケメン連れてんじゃん。美少年過ぎて思わず二度見したわ。お近付きになりたいから紹介しろ❤︎」
「コイツ恋人いるからムリだぞ」
「え〜!フリーなら遊んでみたかったのに!」
「(す、すごい会話聞かされてる…)」
廊下を進むと開いた扉からネグリジェ姿やバスローブ姿の女の子達が顔を覗かせる。
「相変わらずどこでもモテるな」
「美少年なのは否定しません」
「キリッとした顔すらイケメンなの反則だろ。つうかタケミっちのことは見向きもしねぇな」
「ほっといてください…」
無意識に溢れ出るカノトのモテオーラが凄すぎて存在すら気付いてもらえなかったタケミチは目尻に涙の粒を浮かべる。
「前にいたおねぇさん達はまだいるんスか?」
「んなもん、もうとっくにいねえよ。入れ替わりの激しい世界だからな」
そんな会話をしながらドラケンの部屋に着いた。
「あれ?なんか部屋広くなりましたね!」
「おう。前は物置きだった部屋空けてもらってな」
「わー東卍の写真がいっぱい!!オレもいる!!」
「僕も写ってる」
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