第56章 彼の運命
「ねぇタケミチくん」
「どうした?」
「この間タケミチくんが見た謎のビジョンなんだけど、あれから僕なりに考えてみたんだ」
「!」
「確証がないからまだハッキリと断言できないんだけど…君が見たビジョンってもしかして…」
「何話してんだ?二人とも」
前を歩いていたドラケンが首だけを後ろに向け、小声で話す二人に声を掛ける。
「あっ」
「すみません」
「続きはまた後でだな」
「そうだね」
一旦話を切り上げ、ドラケンの後に続いて歩けば、渋谷のど真ん中に聳えるビルに到着した。
「わー!!まだここに住んでるんスね!!?」
「まだバイク屋だけじゃ食ってけねぇからな!手伝いながら住ましてもらってる」
「(ここが…ドラケンくんの家?)」
家というより、普通のビルにしか見えず、カノトは驚いた顔を浮かべて唖然とする。
「カノ、早く来ねぇと置いてくぞー」
「あ、はい!」
ハッとして慌ててドラケンの後を追いかける。ビルの中に入り、待っていたエレベーターが開いて三人は乗り込む。
「たしか…4階っスよね?」
「おー、よく覚えてんな」
「4階4階っと…」
タケミチが4階のボタンを押した瞬間…。
バチンッ
「え!?」
「?」
「え!?」
驚きの声を二回上げたタケミチは焦った様子で自分のTシャツを見る。
「どうした?」
「何か付いたの?」
「いやっ…」
二人の問いかけにタケミチは誤魔化すようにしてシャツから目を放し、顔を上げて前を向く。
「ただいまー」
「おー」
「!?」
4階に到着し、エレベーターの扉が開くと、真っ先に視界に入ったものを見て、ギョッと目を見開いたカノトは慌てて隣にいるタケミチの腕を引いた。
「ねぇ!降りる階間違えてない!?」
「え?4階で合ってるけど…」
「だってここ…大人のお店…」
受け付けカウンターの横には、キャストらしき女の子達が際どい服を着て写っている写真がパネルのように貼り付けられている。
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