第54章 六破羅と梵(ブラフマン)
「(梵!?)」
「(こっちも凄い数!!)」
フード付きの丈の長いコートを頭まで被った梵のメンバーがゾロゾロと集まり始めた。
「ひっ!?また何か増えた!!」
「愚連隊…」
すると煙草を咥えた男がチラリとカノトの方に視線を向ける。
「(え?こっち見た…?)」
「…やっぱ似てねぇわ」
ボソッと男が何かを呟いた。男の名は『明司武臣』。梵のNo.2にして【軍神】の異名を持ち、初代黒龍(ブラックドラゴン)で副総長を務めていた。
「("三天"の内の二チームが集まった!!)」
不穏な予感を知らせるように雨が降り出す。
「何しにきた!!?梵!!」
「…雨か…よく"真"に言われた。"お前は日本一の雨男だ"ってよ」
武臣は吸っていた煙草を指で挟み、煙を吐き出す。
「あと"アイツ"にも"雨が降ると可愛い妹がびしょ濡れになるから責任取ってお前が今すぐ晴れさせろ"なんて無茶苦茶な事も言われたな」
誰の事を言っているのかは分からないが、武臣は昔話を語るように独りごちる。
「用があるのは六破羅単代(オマエら)じゃねぇ!!オレが用があるのは花垣武道!!宮村心叶都!!」
突然名指しされ、二人はビクッと体を跳ねさせる。
「オマエ等をスカウトしにきた」
「へ!?オレ!?」
「(何で私まで…?)」
武臣の言葉にドラケンがピクリと反応を示す。
「ああ、オレはオマエ等が欲しい」
「…な、なんでオレら?」
「オイオイオイ、聞き捨てならねぇなぁ!!」
「!」
「そういう話なら譲らねぇぞ!?」
「カクちゃん!!?」
「(確かタケミチくんの幼馴染みで、関東事変の時にイザナが庇って助けた…)」
「…"喧嘩屋"か」
『天竺』の四天王筆頭だった鶴蝶が、六破羅単代では首席を務めていた。そんな彼の登場にタケミチは驚きを隠せない。
「なんでテメェがサウスの下につく?"王"が死んだら鞍替えか?」
「あ?テメェにだけは言われたくねぇな。佐野真一郎を忘れたか?」
「あ?」
「それとも『皇帝』を仲間に引き入れる事に失敗した腹いせに今度は"弟"を勧誘か?」
「え?皇帝って…」
「……………」
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