第54章 六破羅と梵(ブラフマン)
「…なあ?元壱番隊隊長さんよぉぉ」
「え?オレ?」
「何、他人事みてぇなツラしてんだあ?」
殺気立つサウスの視線がタケミチに注がれる。
「テメェの番だ」
「(ちょっと待って!!?タイムリープ早々大ピンチ到来!!?)」
「それで…その次はオマエだ。元壱番隊隊長補佐さんよぉぉ」
「!!」
「え?壱番隊…?」
「……………」
陽翔は驚いた顔で、冷たい眼を宿してサウスを睨み付けているカノトを見る。
「テメェの噂は聞いてるぜ。不良っぽくねぇ癖に見た目に反して喧嘩が強くて、"東卍の秘密兵器"にして、あの無敵のマイキーのお気に入りだってなあ!」
危険なニヒル笑いを浮かべるサウスの視線がカノトの後ろにいる陽翔に向けられた。
「そこで怯えてる雑魚は何だ?テメェも東卍だった奴か?」
「えっ…お…俺は…」
大男のサウスに鋭い眼光で凄まれ、体が萎縮してしまっている陽翔の声が震えている。
「彼は関係ない、ただの一般人だ。君が興味を持つほどの相手じゃないよ」
「でもテメェとは無関係じゃねぇんだろ?」
「(コイツ…)」
カノトはサウスに苛立ち、掌を強く握り締める。
「もし大事な友達に手を出したら、僕は君を許せなくなる」
「『許せなくなる』?クッ…ハハハ!!オレよりチビで女みたいな体格のオマエがオレに力で挑もうって言うのか!?」
明らかに馬鹿にしているサウスは、自分より弱い存在のカノトを嘲笑い、顔を掌で覆う。
「グラツィオーン(いいね)!!気に入った!!」
面白い玩具を見つけたような顔でサウスは愉しげに声を弾ませる。
「オマエもウチに来い!!宮村心叶都!!」
「は?」
身勝手な事を告げるサウスに苛立ち、ドスの利いた低い声で不快感を顔に出す。
「うあああ!!」
殺伐とした空気の中、六破羅のメンバーの一人が悲鳴を上げたと同時にカノトとサウスの所まで吹っ飛んできた。
「(今度は何!?)」
「サウスー」
「オイオイ邪魔すんなよ"梵(ブラフマン)"」
「人の上に立つならよー、後ろもちゃんと気にかけろ」
顔の右側に大きな傷跡を持つ男が現れた。
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