第54章 六破羅と梵(ブラフマン)
「(『皇帝』は兄さんが学生時代に付けられた渾名だ。どうしてこの人達が兄さんのことを知ってるの?)」
困惑した顔で睨み合っている鶴蝶と武臣を見る。
「暴れ足んねぇのは一緒だ。そうだろ?明司」
「……………」
「(千冬くんと戦ってた戦闘狂…!)」
「初代黒龍、明司武臣。オレが九代目黒龍の総長!!斑目獅音様だっ!!」
「(あ、ぺーやんくんに一発KOされた奴。コイツも六破羅にいるのか。)」
「まどろっこしい事とかどうでもいいし」
「ここでやるんならやっちまおうぜ」
「(え!?灰谷兄弟までいる!!?)」
「ここで戦争おっぱじめるか!?」
「(まさかS62世代がこんなに…!!)」
元天竺のメンバーで、"極悪の世代"と呼ばれた人物達が六破羅に勢揃いしていることにカノトとタケミチは驚いた顔を浮かべる。
「(こりゃあ大戦争勃発!!?)」
「(こんな場所で抗争なんて始められたら大怪我どころじゃ済まないよ!如何にも"喧嘩大好きです"って感じのヤバい奴らがいるんだから…!)」
「はは、血の気が多い連中だな」
「(なのに何だ?明司って奴の余裕…)」
「(この最悪な状況を突破できる策でもあるの?)」
「若ぇってのはいいなあ。なぁ?千咒。」
「『せんじゅ』?」
「(誰のこと?)」
武臣が煙草を咥えて笑った時、走ってきた何者かが持っていた傘をサウスに向けてぶん投げる。
「(傘!?)」
上手く弾き飛ばすが、注意力が傘に向いていた事で、地を蹴って宙を舞った正体不明の人物のかかと落としに気付くのが遅れ、頭に一発もらってしまう。
「(うわ!強烈!)」
手加減の無い強烈な蹴りを食らったサウスは倒れはしなかったが、体が少しよろめいた。そしてフードを被った人物はタケミチの前で綺麗に着地をする。
「傘」
「へ?あ、ハ…ハイ!」
足元に落ちている傘を拾って、慌ててその人物に渡せば、傘を広げて差し、被っていたフードを取った。
「濡れたくねぇんだ」
「梵首領、瓦城千咒」
「え!?」
「(あの子が…)」
「さぁ、殺ろうか」
小柄な体格にピンク色の髪を靡かせた人物は、異様な殺意を纏っていた。
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