第54章 六破羅と梵(ブラフマン)
「ぎゃあー!?俺のリスペクトするドラケンさんを殴って吹っ飛ばしやがったあのデカブツ!!マジ怖ぇー!!」
「落ち着いてよ。あと静かにして。」
「逆に何でお前はそんな冷静なの!?」
陽翔は不良の喧嘩を初めて見たのか、涙目になりながら完全にビビっていた。
「引退なんぞ許さねぇぞドラケン。だったらなぜ東京卍會は"最強"を謳った!?」
頬に青筋を浮かべながら、殺意の孕んだ眼でドラケンを鋭く睨み付ける。
「テメェ」
吹っ飛ばされたドラケンは片膝を付いて立ち上がり、サウスに殴られた時に切ったのか、口の中から"プッ"っと血を吐き捨てる。
「(あのドラケンくんが軽々と吹っ飛ばされるなんて…)」
「フォ、ルテ!!」
「(ドラケンくんが浮いた!!)」
「フォルテシモ!!」
今度は咄嗟にガードするが防ぎ切れず、脇腹を殴って浮いたところをサウスの渾身の力で頭を殴打させられる。
「カハッ」
一方的にやられ続けているドラケンは地面に倒れ、口から血を吐き出した。
「(嘘でしょ!?引退したってあのドラケンくんだよ!?元東卍のNo.2があんなにあっさりやられるなんて…)」
「『不良の時代を創る』。オレと同じ思想を抱いた東京卍會をぶち壊す為…オレは東京に来た」
「(これが…サウスの実力。)」
「引退なんぞ許さねぇぞ。最強は食い殺されるまで最強でいろ。それが"弱肉強食(オレら)"の世界だろぉが!!」
「(ざっと見て100人はいるな。対してこっちは引退した元東卍メンバーとただの一般人の5人。明らかに分が悪すぎる…)」
「オレの下(もと)につくか!!ここで死ぬかの二択だドラケン!!!」
殺意と敵意を剥き出しにしたサウスの迫力に恐怖を覚えた陽翔が震えた声で言う。
「み…宮村…一体何なんだよあの集団。アイツら…暴走族とか云う奴らだろ?このままじゃ俺らもヤベェんじゃねーの…?」
「港区を拠点としてる暴走族のチームで、あの大男が六破羅単代のトップ。そして状況は明らかに最悪だよ」
「な、何でそんな恐ろしい奴らが…」
「安心して。君には指一本触れさせないから」
「宮村…」
首だけを後ろに回し、陽翔を安心させるように優しく笑みを向けるカノト。
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