第54章 六破羅と梵(ブラフマン)
「青宗くん!?」
「は!?どういう状況!?」
走行していると突然、危機迫る声が響き、驚いた4人が一斉に前の方を見ると、バイクに乗った男に背中を掴まれて宙吊りになったボロボロのイヌピーがいた。
「受け取れぇい!!!」
男に片手でぶん投げられたイヌピーがこちらに向かって飛んでくる。
「どけぇええ!!!」
「っ!!ブレーキかけて!!」
「そんな急には無理だっつの!!」
状況が呑み込めずに焦る陽翔だが、本能的に危険を察知して、力一杯ブレーキを握り、バイクは停止した。
「ひ、轢かなくて良かった…」
陽翔は眉間を寄せ、目を瞑って安堵の息を吐いた。イヌピーは無事に着地し、タケミチ達も白線の手前で停まっている。
「さぁ、咲かせようか"夜想曲(ノクターン)"」
「(何なのコイツ…)」
「六破羅単代総代、"無双"のサウス」
胸から右頭部にかけて刺青がある男の正体を知り、カノトは驚いてサウスを見る。
「あれが…六破羅の総代」
バイクのエンジン音が聞こえたかと思えば、いつの間にかカノト達の周りを凄い数の六破羅のメンバーが囲んでいた。
「な、何だよコイツら…!?」
「絶対に僕の側から離れないで」
怯える陽翔を背に隠し、緊迫した面持ちでドラケンに近付くサウスを睨み付ける。
「ドラケーン、オレの仲間になれ」
「(ドラケンくんの勧誘が目的?)」
「大丈夫か?イヌピー」
「ああ…なんとか」
それを聞いてカノトは安堵の表情を浮かべる。
「何度来ても一緒だサウス!オレは六破羅には入んねぇよ!」
「……………」
ドラケンとサウスの身長差は25cm。210cmあるサウスが見下ろすと185cmのドラケンが何故か小さく見えた。
「オレはもう引退した身だ。これ以上不良共(テメェら)の抗争に関わる気はねぇ」
「引退!?オイ!!ドラケン!!!」
「!!」
「フォ、ルテ!!」
ドラケンの引退が許せないのか、激怒したサウスはグッと距離を詰め、油断していたドラケンを力強い拳で吹っ飛ばす。
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