第54章 六破羅と梵(ブラフマン)
「それでドラケンくん、僕を呼び出したのは何か用があったんですか?」
「……………」
先程まで笑っていたドラケンが急に真顔になり、ポケットの中をゴソゴソと漁って何かを出すと、カノトに差し出す。
「両手出せ」
「?」
言われた通り両手を出す。ドラケンが掌を開くと、キラリと光る金属の何かがポトッと両手に乗る。
「!」
「決別した日にマイキーから預かった」
「これ…どうして…」
「あっても邪魔だからオマエに返しといてほしいってよ」
「(邪魔…)」
マイキーの髪色に似たピンクゴールドのパズル型のネックレスがドラケンの手から返される。
「(もう何度目だろう…これを突き返されるのは…)」
「自分で返せって言ったんだけどな…もうオマエと会うつもりはないからって。ひでぇ野郎だよ…散々オマエを振り回して依存しておいて、自分に必要ないと思ったら簡単に手放しちまうんだからな」
「……………」
「これで分かったろカノ。マイキーはもうどうにもなんねぇ。アイツは悪の道を選んでオレらと決別した」
「…ドラケンくん」
「マイキーに手ぇ出すな。アイツはもう東卍の頃とは違う。オマエももうマイキーのことは忘れて自分の幸せを優先しろ」
ドラケンくんは残酷なことを言う
私が万次郎くんを忘れて
幸せになれないことを知っているくせに
「(本当に…残酷。)」
じわりと涙が浮かびそうになるが、陽翔が見ている手前、泣きそうになるのを必死に堪える。
「(あれ…?このネックレス…)」
返されたネックレスに"ある物"が無い事に気付き、ドラケンを見た。
「あの…コレだけですか?」
「ん?」
「チェーンに指輪が通してあったと思うのですが…」
「あぁ…あの指輪か。マイキーから預かったのはネックレスだけだよ」
「そう、ですか…」
明らかに落ち込んだ様子のカノトにドラケンは何と声を掛けていいのか迷う。すると重い空気に堪えられなくなった陽翔が、気まづそうな顔で"そろっ…"っと片手を上げた。
「えーと…その話、俺が聞いてても平気?もし聞かれたくない話なら外に出てるけど…」
「大丈夫、気を遣わせてごめん」
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