第54章 六破羅と梵(ブラフマン)
「特別に俺のゼファー様に乗せてやんよ」
「ちょっと不安なんだけど」
「安心しろって。安全運転で無事に送り届けてやるよ。んで、場所どこ?」
「D&Dっていうバイク屋」
「バイク屋?そこに用事あんの?」
「今朝話したでしょ。同じゼファー乗ってる人がそこで働いてるんだ」
「マジ!?」
パッと嬉しそうな顔を浮かべた陽翔は、縋るような眼差しを向けてきた。
「何?」
「その人に会ってみたい!!」
「え、ドラケンくんに?」
「頼むよ宮村!!」
「うーん…まぁドラケンくんなら嫌とは言わないけど。分かった、メールで伝えておくよ」
「サンキュ!!マジで良い奴だなお前!!そうと決まれば早く行こうぜ!!」
「テンション爆上げじゃん」
同じゼファーを乗るドラケンに会えるのが楽しみで仕方がないのか、陽翔はルンルン気分でゼファーのエンジンを掛ける。
「安全運転でお願いします」
「まっかせろ!」
「(このテンションのまま運転させるの凄く不安なんだけど…)」
カノトは後ろに乗り、陽翔の運転でドラケンが待つD&Dへと向かった。
◇◆◇
「お久しぶりですドラケンくん」
「おう。そっちがオマエが言ってたダチか?」
D&Dに着くと店の中でドラケンがバイクの手入れをしていた。カノトが声を掛けると手を止めて振り返り、陽翔の存在に気付く。
「はい、中学からの友人で…」
「こんちは!宮村から同じゼファー乗ってる人がいるって聞いて会えるの楽しみにしてたんです!バイク初心者なんで色々教えて下さい先輩!」
「先輩はやめろ。龍宮寺堅だ。ドラケンでいい。ゼファーを選ぶなんてオマエなかなか良いセンスしてんじゃん」
「あざっす!」
陽翔はキラキラした眼差しをドラケンに向けている。そして隣にいるカノトにコソッと耳打ちをした。
「めっちゃ良い人だなドラケンさん!頭の刺青カッケェし、頼れる兄貴分って感じがする!」
「ドラケンくんにバイクのこと色々教えてもらうといいよ」
「おう!」
ドラケンの見た目からして怖がられるのではないかと心配したが、どうやら杞憂だったようだ。
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