第54章 六破羅と梵(ブラフマン)
「あっ、そーいや二人とも。みんな誘ってみろよ。三ツ谷君達がいれば百人力だろ!?」
「うん…確かにそうなんだけど…やめとく!」
「僕も夢に向かって頑張ってる三人を誘うのはやめた方がいいと思う」
「へ?」
一頻り談笑をした後、三ツ谷達と別れ、四人は電車に揺られて最寄り駅に辿り着いた。そこで八戒とも別れて三人になった時、千冬が先程の疑問を二人にぶつける。
「なんで誘わなかったんだよ?せっかくみんなに会えたのに!」
「いやーやっぱ頑張ってる人たち見てっと、なんか誘いづらくてさ」
「そんな人達の夢の邪魔になるような真似はしたくないんだ」
「そっかー。あと誰かいたっけなー?」
携帯を開いた千冬の目に現在の時刻が写る。
「やべっ。オレ、バイトの時間だ!!」
「へ?」
「すまん!二人とも!また明日な!」
申し訳なさそうに片手を上げ、千冬はバイト先に向かって行った。
「千冬くん、バイトしてるんだね」
その時、カノトの携帯に陽翔から"今から少し会えないか"というメールが届いた。
「ごめんタケミチくん。急用が入ったから僕も今日はここで帰るね」
「分かった。また明日な!」
タケミチと別れて待ち合わせ場所に行くと、買ってもらったばかりのゼファーに乗った陽翔が携帯を弄りながら待っていた。
「遅れてごめん」
「おー、急に呼び出して悪かったな。来る途中のコンビニで肉まん買ったけど食う?」
「有難う」
出来たての肉まんを手渡しで貰い、紙包みを開けてホカホカの肉まんを一口食べる。
「美味しい…」
「具材たっぷり入ってるしなー」
「それで…どうしたの?」
「んー別に。お前と喋りたかっただけ。最近花垣と松野とばかりいるからさー…」
「あぁ…構ってもらえなくて寂しかったんだね」
「は!?違ぇよ馬鹿!誰が寂しん坊だよ!別にお前がアイツらと仲が良いからそれで俺がイジけてるとかじゃねーからな!!」
「ハイハイ」
「何だよその適当な返事はぁ〜!!」
恐らく図星だったのだろう。寂しくて拗ねている部分を指摘すると、陽翔は慌てたように弁解し始める。カノトは"素直じゃない"と思いながら肉まんをパクッと口に含んだ。
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